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夫婦円満調停とは?費用や流れ、万が一不成立の場合の対処法を解説

夫婦円満調停とは?費用や流れ、万が一不成立の場合の対処法を解説

家庭裁判所で行う夫婦関係の調停は離婚だけではありません。こじれた夫婦関係を元のように戻したいときにも行います。それが「夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)」です。

今回は夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)とは何か、費用や万が一、不成立になった場合の対処法についてご説明します。

夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)とは

家庭裁判所が行う夫婦関係調整調停には離婚調停と円満調停があり、悪化した夫婦関係を修復したいときに行うのが「(夫婦)円満調停」です。

夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)の目的

夫婦円満調停の目的には、次の3つがあります。

  1. 悪化した夫婦関係を修復させる
  2. 離婚をするか迷ったときに調停で解決策を見出す
  3. 夫婦関係が悪化した原因(配偶者の飲酒、ギャンブル、浪費など)を改善するように相手に求めて関係改善を図る

このように離婚を回避して、以前のように夫婦関係が良好になることを目的として行います。

夫婦関係調整調停~円満調停と離婚調停の違い

夫婦関係調整調停のうち、「離婚調停」は離婚することを前提に行います。一方、「夫婦円満調停」はもう一度やり直すことを前提に行います。

ただ、夫婦円満調停をしたからと言って必ずしも夫婦関係が修復できるわけではありません。後述するように不成立に終わることもあり、その場合は離婚調停や離婚裁判になることもあります。

データに見る夫婦円満調停の状況

裁判所が公開している「司法統計」(平成30年度)によると、年間の円満調停の申立て件数は2,666件で、全体の約4.2%です。

調停の種類 件数
離婚 40,620件(63.6%)
円満 2,666件(4.2%)
同居・協力扶助 102件(0.2%)
婚姻費用分担 20,514件(32.1%)
合計 63,902件

(参照:司法統計 平成30年度 婚姻関係事件数  終局区分別申立人及び申立ての趣旨別  全家庭裁判所)
裁判所公式:https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/701/010701.pdf

円満調停を行った結果は下記の通りで、婚姻を継続することになったのは、同居、別居を含めて円満調停申立て件数の約17%、不成立は26.3%で不成立の方が多くなっています。

  • 同居で婚姻を継続……219件
  • 別居で婚姻を継続……234件
  • 調停を取り下げ……108件
  • 調停不成立……702件

なお、夫婦円満調停を夫から申立てる件数は1469件、妻から申立てる件数は1197年で夫からの方がやや多くなっています。

夫婦円満調停の流れ

夫婦円満調停の申立てから終了までの流れは次のようになっています。

  1. 夫婦円満調停を申立てる
  2. 調停に出席する
  3. 調停が行われる
  4. 調停が終了する

それぞれをご説明します。

夫婦円満調停を申立てる

夫婦円満調停をするには、夫または妻のどちらかが家庭裁判所に「夫婦円満調停」を申立てます。
申立て先は、相手が住んでいる地域を管轄する家庭裁判所または夫婦が合意して決めた家庭裁判所のどちらかです。

夫婦円満調停の申立てに必要なもの

申立てには、次の書類が必要です。

  1. 申立書とその写し2通
  2. 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)

申立書は家庭裁判所用に収入印紙を貼付し、それとは別に相手用と自分用の合計3通を準備します。

裁判所によっては「事情説明書」などの書類提出を求められることがあります。

夫婦円満調停申立書の書き方

夫婦円満調停申立書は、下記の記入例のように記入します。
1枚目は下記の番号の通りに記入しましょう。(わかりやすく赤い文字で書いていますが、実際は黒のボールペン(消えるペンはNG)で記入します。)

  1. 事件名に「円満調停」と記入
  2. 1200円分の収入印紙を貼る
  3. 申立てる家庭裁判所の名前
  4. 記入した日
  5. 申立人(自分)の氏名
  6. 申立人の印鑑
  7. 添付書類(戸籍謄本にチェック)
  8. 申立人(自分)の本籍地、住所、氏名(フリガナ)、生年月日、年齢を記入
  9. 相手の本籍地、住所、氏名(フリガナ)、生年月日、年齢を記入

2枚目の記入例です。

  1. 申立ての趣旨……円満調整の1に〇をする
  2. 同居を始めた日と別居を始めた日(別居している場合)
  3. 申立ての動機に該当するものに〇をする

夫婦円満調停の申立ての費用

申立ての費用は収入印紙1200円(申立書に貼る)と郵便切手(800円~1000円ほど)です。切手代は裁判所によって異なるので、事前に確認しておきましょう。

調停に出席する

申立てを行うと調停日の連絡が来るので、指定された時間に家庭裁判所に出向きます。
調停時間は2時間ほどです。

調停が行われる

夫、妻がそれぞれ調停室に呼ばれて調停委員の質問に答えたり、状況を話したりします。
1回30分程度を交互に行います。

調停室で聞かれること

調停室では次のようなことが聞かれます。

  • なぜ夫婦関係が悪化したのか
  • 相手に対する不満
  • 相手に求めること
  • 夫婦関係を回復するために夫婦でどんな話し合いをしたか
  • 自分が関係回復のために何ができるか
  • 今後、どうしたいのか(希望)

その場ですぐに答えられるように、事前に話す内容をメモや手帳に書いて行くと安心です。

~メモ~
2人目の子どもが生まれてから夫がギャンブルに溺れ始めた
休日は朝からパチンコ、夜は深酒が続き、生活費も入れなくなった
相手には
・ギャンブルをやめてほしい
・酒の飲みすぎをやめてほしい
・生活費を〇万円入れてほしい

何度か調停を繰り返す

調停が1回目で終わるということは少なく、2回目、3回目も行うことがあります。

調停が終了する

双方の意見が出尽くしたら、調停委員が意見をまとめます。
次のいずれかの結果が出て調停は終了します。

  • 調停が成立する
  • 調停が不成立で終わる
  • 調停を取り下げる

それぞれのケースを見ていきましょう。

調停が成立する

調停を行った結果、

  • A:同居して婚姻を継続する
  • B:別居して婚姻を継続する

のどちらかに決まり、調停調書が作成されます。

ただ、調停で相手に「ギャンブルをやめる」などの希望条件を出して、相手が合意したとしても強制力はないので、また繰り返すおそれがあります。

調停が不成立で終わる

相手が申立て内容に合意しない場合は不成立となり、夫婦関係の修復は困難ということになります。

その際の対処法については後述します。

調停を取り下げる

離婚調停を進める途中でお互いが和解し、調停を取り下げることがあります。

いわゆる「元のさやに戻る」ということで、夫婦円満調停を申立てた人の約4%(年間100件ほど)は取り上げています。

夫婦円満調停に相手が来ないとき

調停をあなたが申立てると、家庭裁判所から相手に申立書と調停の記事の連絡が届いているはずです。もし、相手が無断欠席をしたとしても調停が無効になることはなく、相手不在で進められます。

そのため、申し立てた方(あなた)の意見は調停委員が聞いてくれるので、きちんとお話しましょう。

その後、家庭裁判所から次の調停期日の連絡が双方に届きます。相手が欠席した場合は出頭勧告がなされますが、それでも出席しないときは調停は不成立になります。

つまり、相手は夫婦関係を修復する意思がないと判断できます。なお、このように相手の態度がのらりくらりとしていて、夫婦関係の修復だけでなく慰謝料や親権などの問題を相談したいときは弁護士に相談しましょう。

夫婦円満調停が不成立になったときの対処法

夫婦円満調停が不成立になるということは、相手が婚姻を継続させる意思がないということ、つまり離婚を考えていると予想されます。

調停が不成立になった場合は、次のいずれかの流れになります。

  • 現状維持
  • 相手が離婚裁判を起こす
  • 時間を空けてから再度調停をする

それぞれを詳しく見ていきましょう。

現状維持

夫婦円満調停が不成立になっても、必ずしも離婚するとは限りません。お互いに離婚を切り出さない場合は、今のままの生活が続きます。

ただし、調停をしたことで、お互いの心境になんらかの変化が生じることがあります。例えば、「相手がこう思っていたのなら、自分の態度を少し変えてみよう」となって関係が少し改善することもあれば、「調停までしたのに応じてもらえないなんて、もう自分たちは無理かな」と離婚に向けて気持ちが動くこともあります。

対処法としては、調停では結論が出なかったので、しばらくは今のままの生活を続けながら時間をかけてお互いに様子を見るのがいいでしょう。

相手が離婚裁判を起こす

相手が調停に応じない(円満調停に不満がある)場合は、相手が離婚裁判を起こすことがあります。

ただ、裁判になると訴えられる側(被告)に離婚原因となる「法定離婚事由」が必要となります。あなた(被告)に離婚原因がなければ相手が裁判をしても離婚が成立することはありません。

また、有責配偶者(離婚原因がある方)からの離婚請求はできません。相手が暴力やギャンブルなどの非がある場合は、裁判そのものが認められないことになります。

ただ、裁判は成立しなくても相手の離婚に対する決意が固いことがわかるので、協議して離婚に至ることも考えられます。自分が離婚をしたくない場合や、慰謝料請求、親権など少しでも有利に進めたい場合は弁護士に対策を相談してみよう

時間をあけてから再度調停をする

夫婦円満調整は、一度不成立になっても再度調停を申立てることができます。その場合は、すぐに申立てても相手の気持ちが変わっていないでしょうし、調停を経てさらに頑固になることも考えられます。

家庭裁判所の方でも、不成立後すぐに申立てても受理しない可能性があります。

再度調停をしたい場合は、少し時間を空けてからにしましょう。

夫婦円満調停を弁護士に依頼したら費用はいくら?

夫婦円満調停を弁護士に相談するだけなら無料~30分5000円ほどです。(弁護士事務所によって異なるので、事前に確認しましょう。)

そこから依頼すると、相談料に着手金や成功報酬がかかるので費用の合計は数十万円になります。

あなたが弁護士に依頼したことを知った相手は、「そんなに費用をかけたのか」「その費用はどこから捻出したのか?」と思い、関係が悪化する恐れがあるので気をつけましょう。

夫婦円満調停で弁護士を依頼するメリット・デメリット

夫婦円満調停を申立てるということは、「配偶者と離婚したくない」ということです。
そのため、何としても関係を修復したい(=夫婦円満調停を成立させたい)の一心で弁護士を頼りたくなる気持ちはよくわかります。

しかし、弁護士に依頼することが必ずしもプラスに働くとは言えません。

弁護士に依頼する場合はメリットとデメリットがあるからです。

メリット

調停には弁護士の同席が認められています。そのため、自分が相手に言えないことを調停の場で弁護士がうまく説明してくれます。

また、調停に臨む前に、相手に求めることを整理してくれるのもメリットのひとつです。例えば、「あれもこれも求めてはだめ」「〇〇に絞って話を進めましょう」といったアドバイスが受けられます。

デメリット

弁護士に依頼するということは、相手はかなりプレッシャーを感じます。あなたが弁護士を依頼したことを知った相手が不快に感じることがあります。

例えば、「自分に何か圧力をかけようとしているのではないか」「夫婦間のことなのに、見ず知らずの第三者に話したのが気に入らない」など悪意に受け止める可能性があり、結果的に調停が不成立になるリスクもあります。

弁護士を頼るなら相談程度がおすすめ

夫婦円満調停を検討するなら、弁護士に相談するだけにとめておくといいでしょう。
または依頼しても調停の場には出席せずアドバイスだけもらうという方法がおすすめです。

夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)を申立てられたときの対処法

次は自分が夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)を申立てられたときについて考えてみましょう。

夫婦円満調停を相手が申し立てた場合、次の2つの道があります。

  • A:相手と話し合って夫婦関係を修復する
  • B:相手とやり直す気はなく、離婚したい

それぞれのケースを見てみます。

相手と話し合って夫婦関係を修復する場合

今までお互いに素直に話し合いができなかった点を調停委員という第三者を交えて話し合うことができます。

相手の不満や言い分を聞き、自分にも言いたいことがあれば調停委員を通じて伝えて、歩み寄ることができます。

最終的に合意して調停が成立すれば、婚姻関係を継続することができます。

相手とやり直す気はなく離婚したい場合

相手が調停を申立てても自分にはやり直す気がない場合や、調停をしても歩み寄れない場合は調停不成立となります。

その後、離婚訴訟を起こす方法がありますが、離婚原因が「法定離婚事由」に該当しない場合は裁判をしても認められません。

離婚するには協議、または調停をしますが、弁護士に相談して最善の方法を考えましょう。

なお、離婚裁判は調停前置主義があり、先に調停をしていないと裁判が起こせない制度になっていますが、夫婦円満調停をしていれば不成立であっても裁判を起こすことは可能です。

補足:夫婦円満調停を欠席したらどうなる?

配偶者から夫婦円満調停を申立てられたが、調停に行けないという場合はどうなるのでしょうか。

どうしても出席できない場合

調停期日の連絡が来ても、どうしても出席できないときは電話で連絡をしましょう。当日、体調が悪くなったという場合も必ず連絡をするようにしてください。

無断欠席した場合

無断欠席をしても、調停が休止になることはありません。自分が不在のままで、調停委員は相手の話を聞くことになります。

さらに無断欠席を続けると調停は不成立となります。

なお、欠席をすると家庭裁判所から「出頭勧告」の連絡がありますが、これを無視し続けると5万円以下の罰金が科されることがあるので気をつけましょう。

「夫婦関係を修復したい」という相手の申し出に応じたくない場合は、欠席ではなく調停の場でそのことを伝えることが大切です。

調停でどう臨むのがいいのか、離婚に向けてどう進めればいいのかわからないときは、弁護士に相談しましょう。

夫婦円満調停(夫婦関係調整調停)のまとめ

夫婦関係調整調停には「離婚調停」と「円満調停」があります。

夫婦円満調停は険悪になっている夫婦関係を修復するのが目的で、その際に相手に希望する条件などがあれば伝えます。

ただ、必ずしも成立するとは限りません。その場合は現状維持、または離婚という選択肢に分かれます。

夫婦円満調停の場に弁護士が同席するのは相手に与えるプレッシャーを考えると必ずしも得策とは言えませんが、今後の夫婦関係のあり方の相談などを含めてトータルで相談することができます。

悩まずに気軽に相談してみましょう。

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