MENU

監護権とは|変更や放棄はできる?親権との違いなどをわかりやすく解説

監護権とは|変更や放棄はできる?親権との違いなどをわかりやすく解説

親権について話し合うときに出てくるのが「監護権(かんごけん)」という言葉です。普段はあまり聞かない言葉ですが、離婚後に子どもを誰が育てるのか決める際に必要な知識です。

このページではそんな監護権について解説しつつ、変更や放棄の可否、親権との違いを詳しくご説明します。

監護権とは

「監護」とは保護が必要な人の生活を支え、面倒を見ることを言います。離婚の場面では、子どもを引き取り、世話をすることを「監護」と言います。

そして監護権とは、子どもの生命や安全を守り、教育(主に精神的な教育)をする権利のことです、

この場合の「子ども」とは未成年の子を指しますが、未成年でも結婚していたら「成人」と判断され、親権や監護権の対象ではなくなります。

なお、監護権は「監護教育権」や「身上監護権」と呼ばれることもあります。

監護権と親権の違い

日本は単独親権なので、子どもがいる夫婦が離婚するとどちらかの親が親権を持ちます。

この親権には「監護権」と「財産管理権」があります。それぞれには次のような意味があります。

財産管理権

子どもの財産を親権者が管理する権利のことで、親権を持つ人に許されている権利です。

監護権

監護権には、次の内容が含まれます。

  • 居所(きょしょ)指定権
  • 懲戒(ちょうかい)権
  • 職業許可権
  • 身分行為の代理権

これらの4つの権利については、後ほど詳しくご説明します。

実は監護権は親権に含まれる権利のひとつ

下の図のように、監護権は親権という大きな権利の中に含まれる権利のひとつということになります。

監護権を持つ人を「監護権者」、親権を持つ人を「親権者」と言い、一般的には親権者と監護権者は同じ人になります。

例えば親権者が母親の場合、監護権者も母親となり監護権を持つことになります。

こちらの記事も読まれています

しかし、母親に金銭の管理を任せられないなどの事情がある場合は親権者を父親にして、母親を監護権者にすることがあります。

親権者と監護権者を分けることで、監護権者は「財産管理権を持てない=子どもの財産を守れる」ということになります。

親権についてはこちらの記事で詳しくご説明しているので、ぜひご覧ください。

こちらの記事も読まれています

監護権に含まれる4つの権利

上の図でもご紹介した監護権に含まれる4つの権利について、詳しくご説明します。

居所指定権

居所(きょしょ)指定権は親権者(または監護権者)が子どもの居住する場所を決める権利のことで、民法第821条で定められています。子どもは親権者(または監護権者)の決定に従わなければなりません。

ただし、指定した居住地が子どもの教育上で好ましくない場合は権利の濫用となり、無効と判断されます。

懲戒権

懲戒権は必要に応じて子どもを懲戒できるという権利のことで、民法第822条で定められています。

ただし、親だからと言って、むやみに子どもを怒鳴ったり、暴力をふるったりしていいというわけではありません。
特に近年は児童虐待が社会問題化していることもあり、平成23年に民法第820条の条文の中に、「子の利益のために」という一文が追加されました。

民法第820条 【監護及び教育の権利義務】
親権を行う者は、「子の利益のために」子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

この改正によって、監護権について定めている民法第822条も「子の利益のために」子どもを懲戒する権利を持つということになりました。

しかし、懲戒とはどの程度の行為を指すのか、またどんな行為なら権利の濫用となるのかといった明確な線引きがなされていないのが現実です。

懲戒とは

親が子どもに行う懲戒についての具体的な規定はありませんが、民法の注釈書によると、懲戒には次の行為があるとしています。

  • 叱る
  • 殴る
  • ひねる
  • しばる
  • 押入れや蔵(くら)に入れる
  • 食事を抜く

昔のアニメなどを見ていると、子どもを押入れに入れたり、「今日はご飯は抜き」と言って叱ったりする場面が出てきます。

昔の家には蔵(くら)という物置のような場所があり、そこに子どもを入れて反省させることもありました。

これらはしつけや教育の一環として行われていたものですが、現代ではこういった行為が行き過ぎると「体罰」「虐待」となり、子どもの成長によくないことがわかっています。つまり、「子の利益のために」ならない結果になってしまうのです。

懲戒権を濫用したとき

過度な体罰や懲戒が行き過ぎて虐待になったときは「懲戒権の濫用」となり、親権が喪失することがあります。

民法第834条 【親権喪失の審判】
父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるとき、その他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。
ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

また、体罰などで子どもがケガをしたり、精神的に不調を来たしたりしたときは、次のような刑に該当する可能性があります。

罪名 該当する法律 刑罰
傷害罪 刑法第204条 15年以下の懲役または50万円以下の罰金
暴行罪 刑法第208条 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
脅迫罪 刑法第222条 2年以下の懲役または30万円以下の罰金
逮捕・監禁罪 刑法第220条 3月以上7年以下の懲役

「脅迫」とは「〇〇しないと食事を与えない」といった行為で、過去にも幼児に早朝から勉強を強要し、できなければ食事を与えないといった虐待行為をした親が逮捕された事件がありました。

また、「監禁」は家に閉じ込めて外に出さない、自由を侵害する行為などが該当します。

職業許可権

子どもが営業したり、他人に雇用されたりすることを許可する権利のことで、民法第823条で定められています。

例えば子どもがアルバイトをしたいと言った場合に、親権者(監護権者)はそれを許可するかしないかを判断できる権利があります。

ただし、この場合も「子どもの利益のためになる」かどうかが重要です。学校でもアルバイトが認められていて、自分がほしいスポーツ用品や楽器を購入するためにアルバイトしたいという場合は、「働いて社会経験を積む」「自分で働いて得た報酬で買い物をする」という点で「子どもの利益のためになる」と判断できます。

むやみに働くことを反対・禁止する行為は権利の濫用になります。

身分行為の代理権

親権者(監護権者)は子どもの身分に関する行為の代理を行う権利があるということで、民法第824条に定められています。

身分に関する行為とは結婚や養子縁組、相続などを指し、それらを代理で行える権利ということです。

監護権者の義務

一方で監護権者には義務もあります。

民法第820条に「親権を行う者は子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し義務を負う」とあるように、監護権を持つ人には「子どもを教育する義務」「子どもの健康を守る義務」などもあります。

監護権の変更や放棄は可能?

離婚するときに親権者と別に監護権者を決めた場合、変更や監護権の放棄はできるのでしょうか。

監護権者の変更は可能

一度決定した親権者を変更するには家庭裁判所での手続き(調停)が必要ですが、監護権者の変更は当事者同士(元夫婦同士)の話し合いだけで可能です。

監護権者の変更手続き

監護権者を変更したい場合は、まず夫婦で話し合いをします。話し合いで合意できればそれで変更は完了し、特に家庭裁判所や役所への届け出が不要です。

子どもは新たに監護権者になった親の元で暮らすことになります。

話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停を申立てて調停委員を交えて話し合うことになります。

監護権の放棄

離婚後に子どもを引き取り養育していた監護権者が、「自分には育てられない」という事情が起こったときは監護権を放棄することは可能です。

この場合は親権者が監護権を持つということになります。

ただし、一方的に子どもを放り出すのではなく、親権者と話し合って相手に引き取ってもらうなど、子どもの利益を最優先にしなければなりません。

手続きは監護権者の変更と同じで、双方の話し合いだけで決めることができます。

親権の放棄や辞任は家庭裁判所での手続きが必要

監護権者の変更や放棄には手続きはいりませんが、親権の放棄や辞任は家庭裁判所での手続きが必要になります。

また、子どもが15歳以上になっていれば、親権者を変更する際には子どもの意見を聞く必要があります。

なお、自分から親権や監護権を放棄しない場合でも、子育てがきちんとできていないときは親権・監護権のはく奪や一時停止の処分がくだされることがあります。

これらは家庭裁判所が子ども、その親族などから請求があった場合に実施されます。多くは子どもに対する虐待などが理由で、「親権喪失の宣告」などが出されます。

親権者と監護権者を分けることは問題が多い

親権者と監護権者を分けることは法律的には可能ですし、将来変更することも可能です。

ただ、親権者と監護権者を別にすることは、次のように多くの問題が発生する懸念があります。

  • 子どものお金の使い道に関して監護権者は親権者に相談しなければならない
  • 子どもの進学や転校、手術などで親権者の許可や同意が必要になる
  • 子育ての方法に関して親権者が監護権者に口出しをすることがある
  • 離婚して数年後に監護権者の元から親権者の元に子どもが移ったときに子育ての方針が異なり、子どもが混乱することがある

このように親権と監護権者を分けることで何かとトラブルが起こることが想定されるため、離婚時の話し合いでは親権者と監護権者は分けずに決めることがほとんどです。

また、家庭裁判所でも親権者と監護権者は同じ人になるように進めます。

父親が親権を持ちたいが海外出張や単身赴任で子育てができないケースや、母親は浪費癖があるので金銭管理を任せられないが、子どもが小さいので監護権者を母親にする…といったケースで認められることが多いようです。

しかし親権や監護権に関しては離婚時によくトラブルになります。困ったときは弁護士に相談してスムーズな解決を図りましょう。

監護権でよくあるQ&A

監護権に関してよくあるQ&Aをご紹介します。

Q:自分(妻)に収入がないと親権者にはなれないのですか?

夫と離婚することになりましたが、子どもが小さくて短時間のアルバイトしかできず、自分には収入がありません。

収入がないと親権者にはなれないのでしょうか?
その場合、子どもの面倒を見る「監護権者」になる方法もあると聞きましたが、親権者になるのとどちらがいいでしょうか?

A:収入がなくても親権者になることはできます

親権は収入以外に多くの面で検討して決めるものです。特にお子様が小さい場合は、どうしても母親の存在が必要です。

そのため、親権を決める際には「母性優先の原則」があり、母親の方が有利になります。

子どもがいる夫婦が離婚したら、夫は養育費を支払う義務があります。妻の収入が少ないと、それだけ養育費の金額も多くなるので収入が少ないからという理由で親権者になれないということはありません。

経済的な不安は児童手当や児童扶養手当の受給など公的支援の活用で解決することが多いものです。

家庭裁判所では親権者と監護権者を分けることはあまり推奨していません。子どもにとってプラスになる選択をしてあげましょう。

監護権とは~まとめ

監護権とは親権の中でも子どもの教育やお世話をする権利のことを言います。

財産管理権がないため、子どもにとって母親の存在は必要だが金銭にルーズなので財産管理を任せられないというときに親権ではなく監護権を持つように決めることができます。

ただ、親権者と監護権者を分けることは好ましくないことが多いため、家庭裁判所でもあまり勧めていません。

親権、監護権でお困りの場合は弁護士に相談してみましょう。

離婚問題にお悩みで、弁護士をお探しの方へ

当てはまるなら、すぐに弁護士に相談!

  • 話し合いで円満に離婚できる可能性が低い
  • 慰謝料の請求について不安がある
  • 調停離婚になり弁護士を探している
今すぐ離婚問題に強い弁護士を探す

「離婚の基礎知識」記事一覧