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接近禁止命令とは?申立ての条件や期間、違反への罰則を紹介

接近禁止命令とは?申立ての条件や期間、違反への罰則を紹介

配偶者から暴力を受けていると、身体に危険が及ぶ場合があります。そんなとき、配偶者が近づかないようにする方法として「保護命令」があります。

接近禁止命令は保護命令のひとつです。どんな内容なのか、接近が禁止される期間や違反したときの罰則などについてご説明します。

接近禁止命令とは

接近禁止命令とは、配偶者が身辺のつきまといや住まいの近くなどを徘徊する(ウロウロする)ことを禁止する法律です。

保護命令の中のひとつで、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」によって定められています。

保護命令の種類

保護命令には、次の5つの種類があります。

保護命令の種類 具体的な内容 期間
接近禁止命令 申立てた人への身辺のつきまといや住まい周辺、勤務先を徘徊(はいかい)することを禁止する 6ヶ月間
電話等禁止命令 申立てた人への面会の要求、行動の監視を告げる行為、無言電話、緊急性のないFAXの送付、 粗野で乱暴な言動、汚物や動物の死体などの送付を禁止する 6ヶ月間
子への接近禁止命令 申立てた人の子どもの連れ去り、身辺のつきまとい、学校の周辺など子どもがいる場所の徘徊を禁止する 6ヶ月間
親族への接近禁止命令 申立てた人の親族に対して、身辺のつきまといや住まい周辺、勤務先を徘徊(はいかい)することを禁止する 6ヶ月間
退去命令 相手が住んでいる家から退去するように命じる 2ヶ月間

なお、電話等禁止命令、子への接近禁止命令、親族への接近禁止命令は申立てた本人へ接近禁止命令が出ている場合にのみ発令されます。

今回はこの5つの保護命令の内、「接近禁止命令」を中心にご説明します。

接近禁止命令の申立てができる条件

接近禁止命令の申立てができるのは一定の条件を満たした場合だけです。申立てができる人や相手、状況などの条件をご紹介します。

接近禁止命令を出したい相手と結婚や事実婚、内縁関係になっている

接近禁止命令の申立てができるのは接近禁止命令を出したい相手と結婚している人、または事実婚や内縁関係にある人だけです。

申立てる相手 接近禁止命令が出せるかどうか
結婚相手(配偶者)
離婚した相手
(元配偶者)(※)
事実婚や内縁関係の相手
職場の同僚 ×
見ず知らずのストーカー ×

(※:元配偶者に対して接近禁止命令の申立てができるのは、結婚していた時期にDV(暴力)を受けていた場合が対象となります。)

このように接近禁止命令の申立てができるのは、相手と婚姻関係にある、または事実婚や内縁関係が継続している場合だけです。

恋人や結婚相手(配偶者)ではない職場の同僚、いつの間にかつきまとっているストーカーなどは対象外ですので注意してください。

親族が代理で申立てはできない

申立てができるのは本人に限られています。親族(親や兄弟)、友達などが代理で申立てるとはできません。

ただし、弁護士に依頼した場合は代理で申立ててもらうことができます。

実際にDVを受けたり危害を受ける恐れがあれば申立て可能

接近禁止命令はどんな状況でも申立てができるわけではありません。

申立できるのは次のような状況のときに限られています。

  1. 婚姻関係中(または事実婚や内縁関係にあるとき)にDVを受けた
  2. 将来、暴力などによって生命や身体に重大な危害を受けるおそれがある
  3. 申立てをする前に警察や配偶者暴力相談支援センターなどに相談に行っている

これらの条件がそろったときに、接近禁止命令の申立てができます。

接近禁止命令で禁止できる行為と期間

接近禁止命令で禁止できるのは、次のような行為です。いずれも申立人に対して禁止できます。

  1. 身辺をつきまとう
  2. 住居や勤務先などの周辺を徘徊する

身辺をつきまとう

接近禁止命令が発令されると、申立人の周辺をつきまとう行為は禁止されます。

「つきまとい行為」とはストーカーのように後をつけたり、待ち伏せしたりする行為を指します。

住居や勤務先などの周辺を徘徊する

申立人に対して、次のような行為が禁止されます。

  1. 申立人の家の近くをウロウロして行動を見張る
  2. 家の窓から中の様子をうかがう
  3. 申立人には声をかけないが、家や勤務先の周辺をウロウロする
  4. 勤務先のまわりをウロウロして、帰宅時間などを調べる

接近禁止命令の有効期間

接近禁止命令の有効期間は6ヶ月間です。相手によっては6ヶ月経過後にまたつきまといなどの接近行為をする可能性があります。

そのためこの6ヶ月間を有効に活かして、相手が知らない場所に引っ越すなどの対策を取りましょう。

接近禁止命令の期間延長はできる?

接近禁止命令の有効期間は6ヶ月ですが、それ以降も身の危険を感じる、引っ越しもできないという場合は再度、接近禁止命令を申立てることで期間の延長が可能です。

ただし、申立てから効力が発生するまで1週間ほどかかります。その日数を考慮して、早めに再申立ての手続きを進めましょう。

接近禁止命令の申立て方法

接近禁止命令の申立て方法をご説明します。接近禁止命令を含む保護命令を申立てるには、先に警察か配偶者暴力相談支援センターなどに相談に行く必要があります。

「相談に行った」という事実が必要なのですが、相談に行っていない場合は公証人役場に行き「公証人面前宣誓供述書」を提出して公証人の認証を受ける方法があります。

「公証人面前宣誓供述書」という書類も、公証人役場も普段の生活ではなじみがないものです。

それだけにハードルが高いと感じる人が多いと思います。そのときは、お住まいの地区の配偶者暴力相談支援センターに相談に行ってみましょう。

なお、相談センターは地域によっては女性センターや男女共同参画センター、福祉事務所などの中に設置されていることがあります。まずは近くの役所で聞いてみてください。

接近禁止命令の申立て手順

接近禁止命令の申立ては「被害者自身」が行います。家族や友人が代理で申立てることはできませんが、弁護士は代行が可能です。

申立て書は、次のいずれかの地方裁判所に提出します。

  • 自分が住んでいる地域
  • 配偶者が住んでいる地域
  • 身辺のつきまといや徘徊をした場所

申立てに必要なものを用意する

申立て時には、次のものを提出します。

  • 申立書
  • 戸籍謄本、住民票の写し
  • 保護命令の審理に必要な証拠となる書面(写真や診断書、説明を書いたものなど)
  • 公証人に認証を受けた書面(相談センターや警察に相談していない場合)

戸籍謄本と住民票の写し以外は2部提出します。

また、15歳以上の子にも接近禁止命令を申立てるときは子どもの同意書も必要です。

申立書の書き方

保護命令の申立書を利用します。

申立書は地方裁判所のホームページからダウンロードするか、裁判所で受け取ることができます。裁判所によって若干様式が異なりますが、ここでは東京地方裁判所の様式でご説明していきます。

また、記入例はわかりやすいように赤い文字で記入していますが、実際は黒のボールペン(消えるタイプのペンはNG)でご記入ください。

【1枚目の記入例】

接近禁止命令_1枚目記入例
  1. 作成日
  2. 申立人(自分の氏名と印鑑)
  3. 相手と同居しているか、別居しているか……該当する箇所の□にチェックを入れる
    (なお、一時的に避難している場合はその□にチェックを入れます)
  4. 添付書類の該当する□にチェックを入れる

【2枚目の記入例】

接近禁止命令_2枚目記入例

「申立ての趣旨」の「接近禁止命令」の□にチェックを入れます。
また、子どもや親族への接近禁止命令も申立てるときは、それぞれの□にチェックを入れて、下部に子どもや親族の氏名、生年月日などを記入します。

【3枚目以降の記入】

接近禁止命令の申立書は何枚もあります。

3枚目以降はそれぞれの用紙を見ながら、夫婦の状態(結婚した時期)、いつどのような被害を受けたのか、配偶者暴力相談支援センターまたは警察に相談した日時や内容、申立人(自分)と相手の住所などを記入していきます。

接近禁止命令の申立ては弁護士に頼む方法も

接近禁止命令の申立ては用紙が多い上に、事情も細かく記入しなければなりません。相手のつきまといなどで精神的にダメージを受けていて申立書の記入や申立てを行うことが困難な場合は弁護士に依頼するといいでしょう。

その後のアドバイスも受けられるのでおすすめです。

相手が接近禁止命令に違反したときの罰則

接近禁止命令が発令されても相手がそれに従わないときは、「接近禁止命令に違反した」ということで「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」という刑事罰が科されます。

相手があなたの周辺をウロウロしたり、つきまといをしたりすれば自分で対応せずに警察に通報しましょう。事前に警察に相手のことや接近禁止命令が発令されたことを伝えていると対応が早くなります。

接近禁止命令は効力があるので、ひとりで被害に悩まずに勇気を持って相談機関や警察に相談に行き、申立てをしましょう。

接近禁止命令でよくあるQ&A

接近禁止命令に関してよくあるQ&Aをご紹介します。

Q:夫が妻に対して接近禁止命令を出せますか?

妻と別れたいと思い別居していますが、私の仕事帰りを待ち伏せしたり、休日に家のまわりをウロウロして室内の様子をうかがったりしています。

接近禁止命令は夫(男性側)が妻(女性側)に出すことはできますか?

A:可能です

接近禁止命令は「配偶者からの接近を禁止するもの」なので、男女を問わず発令することができます。

ただ、世間一般には男性からの暴力や脅迫、つきまといの事例が多いため、女性側の立場に立った内容が多くなっています。男性側からの申立ても可能ですので、弁護士に相談しながら進めていきましょう。

Q:離婚してもつきまといが続くが接近禁止命令は出せますか?

元夫が離婚後に私の家を探っているようです。子どもを引き取っているので、子どもへの影響も心配です。

離婚後の夫のつきまといに対して接近禁止命令を出してもらうことはできますか?

A:離婚前からの行為に対しては可能です

配偶者の暴力や脅迫、つきまといが離婚する前からあったものなら、離婚後に接近禁止命令を申立てることは可能です。

婚姻期間中は何もなく、離婚してからつきまといなどが始まった場合は対象外になります。ただ、ストーカー行為などが見られた場合は警察に相談してみましょう。

接近禁止命令とは~まとめ

「接近禁止命令」は配偶者からのつきまといや身辺の徘徊を禁止する命令です。配偶者のDVを禁止する「保護命令」のひとつで、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法)」によって定められています。

接近禁止命令の申立ては被害者自身または弁護士が行います。申立書には多くの記入欄があるので、弁護士に相談しながら進めると安心です。

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