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保護命令とは?発令で禁止できる行為や手続きの流れを紹介

保護命令とは?発令で禁止できる行為や手続きの流れを紹介

配偶者や内縁関係のパートナーからのDVに関する問題が増加しています。暴力や脅迫が続くと身の危険を感じ、一緒に生活できなくなってしまいます。

そんなときに役立つのが「保護命令」です。自分から裁判所に申立てる必要がありますが、法的な効力があるのでぜひやってみましょう。

保護命令で禁止できる内容や手続き方法を詳しくご説明します。

保護命令とは

保護命令とは

保護命令とは、結婚相手(内縁関係や事実婚のパートナーも含む)から身体に対する暴力や、生命などに対する脅迫を受けた場合に、被害者が申立てることで裁判所が加害者(結婚相手やパートナー)に対し、「今後接近してはいけない」「住んでいるところから出ていく」「電話をかけることを禁止する」などを命ずる命令です。

これは平成13年にできた、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)」で定められています。

保護命令の対象となる暴力とは?

保護命令の対象となる行為には、次のものがあります。

対象となる行為 具体的な内容
暴力 殴る、蹴る、投げ飛ばすなど
生命等に対する脅迫 「殺すぞ」「死ね」などと脅迫する行為
こぶしを振り上げて殴るそぶりを見せる
物を投げるそぶりを見せる
心身に有害な影響を与える言動 大声で怒鳴る
バカにする
命令する
無視する

保護命令の対象には精神的な暴力も含まれる

上の表にあるように「無視する」「バカにする」といった行為で精神的な暴力(いわゆるモラハラ)も保護命令の対象になりますが、命令を出すためににはそれを証明する必要があります。

具体的にはバカにしたり、命令を出して言うことを聞かないと怒るなどの様子を録音する、精神的に不調になって心療内科を受診した診断書などを出すといった方法で証明しなければなりません。

なお、保護命令には男性(夫)から女性(妻)に対してでなく、妻から夫への暴力も含まれます。

また、結婚中だけでなく離婚後に元結婚相手から暴力や脅迫が続く場合も対象になります。

恋人同士の関係は対象外

保護命令は夫婦間(離婚後も含む)、または内縁関係や事実婚の男女間での暴力を対象にしています。

恋人同士の場合は対象外なので、たとえ暴力やモラハラがあっても保護命令を出してもらうことはできません。警察に相談したり、弁護士を雇って慰謝料の請求を検討した方が良いでしょう。

保護命令で禁止できる行為

保護命令には次の3つの行為を禁止する効力があります。

  • 接近禁止命令
  • 退去命令
  • 電話等禁止命令

それぞれを詳しくご説明します。

接近禁止命令

命令が出されると、加害者(暴力をふるう結婚相手)は被害者の身辺に6ヶ月間つきまといや徘徊ができなくなります。

身辺とは住んでいる家や職場、通勤途中などその人の周辺のことを言います。

退去命令

命令が出されると加害者は自宅(生活の本拠)から2ヶ月間、退去しなければなりません。退去だけでなく、被害者が自宅に住んでいる場合は、そこに近づくことも禁止されます。

2ヶ月間と期間が短い理由は、その間に被害者が引越しなどをして加害者から逃げるための時間を設けるためです。被害者がずっと自宅にいると、2ヶ月経過後には加害者が戻ってきます。

早めに引越しをするなどして、加害者から逃げるようにしましょう。

電話等禁止命令

次のような電話をかけたり、行為をしたりすることが禁止されます。

なお、電話等禁止命令が発令されるには接近禁止命令が発令されることが条件となっていて、禁止期間も接近禁止命令と同じです。

  • 面会を要求する電話
  • 被害者の行動を監視している(〇〇で見張っているぞなど)と思わせることを告げること
  • 無言電話をかけること
  • 連続して何度も電話やFAX、メールをすること(※)
  • 午後10時から午前6時までの間に電話やFAXをすること(※)
  • 汚物や動物の死体等を送付すること(玄関前に置く、窓から投げ入れるなど)

(※)緊急時にやむを得ない場合は除きます。

保護命令は被害者の子や親族にも出される

保護命令は被害者本人だけでなく被害者の子どもや親族、上司、友人など被害者と深い関係がある人にも出してもらうことができます。

なおその場合は被害者本人にも接近禁止命令が出されることが条件になっていて、期間も本人と同じになります。

保護命令に違反したときの罰則

保護命令には罰則もあり、かなり強い効力を持っています。

被害者が保護命令を申立て、裁判所から命令が出されたのに加害者がそれを守らず違反したときは、1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。

保護命令の申立て手続きの流れ

①:まずは相談するor公証人の認証を受ける

保護命令は被害者が地方裁判所に申立てますが、その前に次のいずれかを行う必要があります。

  1. 配偶者暴力相談支援センターか警察に相談し、援助や保護を求める
  2. 公証人役場で公証人面前宣誓供述書(※)を提出し、公証人の認証を受けること

(※)公証人面前宣誓供述書とは、加害者から暴力や脅迫を受けたことを被害者が供述する書面のこと

公証人役場は日常生活ではあまりなじみがないところなので、書類を提出し認証を受けるのは抵抗を感じる人が多いかも知れません。

その場合は警察や近くの配偶者暴力相談支援センターに相談に行くのがいいでしょう。現実的なアドバイスももらえますし、保護命令の申立ての条件を満たすこともできます。

なお、配偶者暴力相談支援センターは自治体の役所のほか、女性センターや男女共同参画センター、福祉事務所などに設置されています。

以下の順番で手続きを進めていく

上記のいずれか(①配偶者暴力相談支援センターか警察への相談、または②公証人面前宣誓供述書の作成と認証)を済ませたら、次の流れに沿って手続きを進めていきます。

  1. 地方裁判所に保護命令の申し立てを行う
  2. 申立人に対して審尋が行われる
  3. 加害者に対して審尋が行われる
  4. 保護命令の発令(または発令しない)が決まる
  5. 裁判所から被害者と加害者に発令の連絡がある

では、各ステップを詳しくご説明していきます。

地方裁判所に保護命令の申し立てを行う

まず、地方裁判所に保護命令の申立てを行います。申立てをする人のことを「申立人(もうしたてにん)と言います。

項目 内容
誰が 申立ては被害者本人が行う(親や親戚、友人などはできない)
弁護士は代理での申し立てができる
どこに 申立て先は被害者または加害者の住所、
または暴力や脅迫が行われた場所の管轄の地方裁判所
何を提出 ・申立書
・戸籍謄本、住民票の写し
・保護命令の審理に必要な証拠となる書面(写真や診断書、説明を書いたものなど)
・公証人に認証を受けた書面(相談センターや警察に相談していない場合)
(戸籍謄本と住民票の写し以外は2部提出する)
・15歳以下の子にも接近禁止命令を申立てるときは子どもの同意書
費用 ・申立手数料1000円分の収入印紙(※)
・郵送の切手代(裁判所によって異なるので事前に調べる)

(※:収入印紙は申立書1通だけに貼る)

申立書に書く内容

申立書には次の内容を記入します。

  • 当事者(自分と相手)の氏名と住所
  • 申立ての趣旨(どの保護命令を出してほしいのか)
  • 相手から受けた暴力や脅迫の内容(いつ、どこで、どんなことをされたのか)
  • 配偶者暴力相談支援センターや警察に相談した内容
    (相談機関の名称、相談した日時、相談内容、相談に対して取られた措置など)

子どもや親族などに保護命令を出してほしいときは、保護命令が発令されないとどんなことが起こるかを説明する内容も記述して提出します。

申立書の住所について

申立書は加害者側にも送付されます。加害者に住所を秘密にしている場合、現住所を書くとあなたがどこにいるのかがわかってしまいます。

その結果、また暴力を受けたり、報復でどなり込んだりされるリスクがあります。

そのため、申立人の住所は元の住所(加害者と一緒に住んでいたときの住所)にしておき、書類を送付しても問題がない住所を「送達場所等届出書」に記入して裁判所に提出します。

申立てのときの注意点

虚偽の申立て(相手の暴力をおおげさに書くなど)をした場合は、申立人(=自分)に10万円以下の罰金が科されます。

また、虚偽告訴罪に問われた場合は3ヶ月以上10年以下の懲役が科されることがあります。

申立書と証拠書類は加害者に送付されるので、内容が事実とかけ離れていると相手(加害者)が反論する可能性があります。

保護命令を出してほしいためにおおげさな内容を書いたり、ウソを書いたりするのは逆効果になるのでやめておきましょう。

申立人に対して審尋が行われる

申立てを行うと、裁判所から審尋(しんじん)が行われます。

これは裁判官が申立人と面接して事情を聞くことですが、弁護士に依頼していれば弁護士が代理で審尋を受けることができます。

人によっては加害者(暴力をふるった結婚相手)とのことを説明するのが苦痛であったり、そのときのことを思い出して精神的につらくなったりすることがあります。そんなときは弁護士に依頼した方が安心です。

加害者に対して審尋が行われる

次に加害者にも裁判官が面接して事情を聞き、申立書にある内容が事実かどうかを確認します。

上でも書きましたが、加害者には申立書と証拠書類が送付されています。審尋のときに反論や言い逃れされないように、しっかりした証拠を提出することが大切です。

保護命令の発令の可否が決まる

裁判所では双方に審尋して事情を聞き、保護命令を出すかどうかを決断します。

ただ検討した結果、保護命令が出されないこともあります。

また、審尋が行われて保護命令の決定が出るまでの審理期間は約2週間です。

裁判所から被害者と加害者に発令の連絡がある

審理が終わると裁判所から被害者(申立人)と加害者に保護命令発令の連絡が届きます。これをもって保護命令の効力が発生します。

保護命令が不服の場合は即時抗告が可能

保護命令が発令されたとき、加害者が不服に思った場合は裁判所に対して即時抗告ができます。

また、保護命令が認められないときも、申立人は裁判所に即時抗告ができます。

保護命令申立てに必要な費用

保護命令を申立てる費用としては収入印紙代1000円と郵送代(裁判所によって異なる)、戸籍謄本や住民票を取り寄せる費用がかかりますが、合計でもそれほど高額になることはありません。

弁護士を依頼する場合の費用

保護命令の申立ては弁護士に依頼することもできます。

その場合の費用は弁護士事務所によって異なるので相談してみましょう。

保護命令の弁護士費用の例

ある弁護士事務所での保護命令に関する弁護費用は次のようになっています。

項目 費用
相談料 30分で5000円
着手金 20万円~30万円
報酬 10万円~

なお、弁護士には保護命令だけを依頼するより、証拠を集める、離婚調停や離婚訴訟、慰謝料請求までの一連を同じ弁護士事務所に相談、依頼する方がスムーズに進められますし、費用も割安になります。

まずは一度相談してみるといいでしょう。

保護命令の申立てをするメリット

保護命令を申立てる場合は、次のようなメリットがあります。

  • 加害者からの暴力や脅迫が収まり安心して生活できる
  • 離婚が認められやすくなる
  • 離婚していなくても児童扶養手当が受給できる

加害者からの暴力や脅迫が収まり安心して生活できる

保護命令は法律に基づいて出されているもので、相手が命令を守らずにあなたに接近したり、電話をかけたりすると罰せられます。

そのため、加害者からの暴力や脅迫に悩むことなく生活できます。

離婚が認められやすくなる

保護命令が出されるということは裁判所が相手の暴力や脅迫があったことを認めたということになり、離婚も認められやすくなります。

離婚していなくても児童扶養手当が受給できる

本来、「児童扶養手当」は離婚などでひとり親家庭になったときに支給されるものです。そのため、配偶者の暴力から逃れるために別居していても離婚していない場合は受給できませんでした。しかし、平成24年の法改正によって、保護命令が出ていれば児童扶養手当が受給できるようになっています。

加害者が受けるデメリット

一方、保護命令が発令されると加害者には下記のようなデメリットがあります。

  • 配偶者や子どもに会いに行けない
  • 自宅を退去する場合がある
  • 精神的なダメージを受ける

配偶者や子どもに会いに行けないのは仕方がないとしても、自宅を退去しなければならないというのは相手にとって大きな痛手となります。また、保護命令は強制力があるため、相手は精神的にも大きなダメージを受けるでしょう。

しかし、それだけのことをしたのだということを自覚してもらうためにも、そして自分や子どもの安全を守るためにも勇気を出して保護命令の申立てを進めましょう。

加害者が保護命令に従わないときの対策

保護命令が出されたのに加害者が命令に従わずに会いに来たり電話をかけたりすると怖いですよね。そのときは迷わず警察に連絡しましょう。

「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV防止法)によって警察は次の行為ができると定められています。

警察官による被害の防止(第8条)
通報等により配偶者からの暴力が行われていると認めるときに、暴力の制止、被害者の保護その他の配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な措置を講ずるよう努めること

警察本部長等の援助(第8条の2)
配偶者からの暴力を受けているときに、警視総監若しくは道府県警察本部長又は警察署長が、一定の要件を満たす場合に、配偶者からの暴力を受けている者に対し、当該被害を自ら防止するための措置の教示その他配偶者からの暴力による被害の発生を防止するために必要な援助を行うこと

つまり、相談を受けた警察は、加害者が被害者の周辺をうろついたりした場合、パトロールや職務質問をして被害の発生防止のための援助ができるということになっています。

保護命令とはまとめ

配偶者の暴力や脅迫がひどく、心身に危害が及ぶ場合は保護命令を申立てることができます。自分や子どもに身の危険が迫る前に対策を取ることが大切です。

配偶者の暴力などが保護命令の申立て理由に該当するのかどうかがわからないときや、申立てて発令されるまでの間に暴力や電話があるのが怖いという場合、また相手が保護命令に従わない場合などで不安に感じたときは弁護士に相談しましょう。

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