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離婚時の年金分割~受け取り条件と手続き方法

離婚時の年金分割~受け取り条件と手続き方法

離婚時の年金分割の基本的なルール

離婚したときに、夫の年金の一部を妻に分割するのが「年金分割」です。
年金分割の主な目的は、専業主婦などが離婚した場合の老後の生活をささえることですが、専業主婦ならば誰でも分割を受けられるわけではありません。

ここでは、年金分割の基本的なルールをみていきましょう。

分割対象は厚生年金(共済年金)

日本の公的年金制度は2階建てで、1階が国民年金、2階が厚生年金(旧共済年金を含む)です。
しかし、年金分割の対象となるのは、2階部分だけです。

将来もらえる年金額を計算する際は1階と2階を足した金額で認識していることが多くなりますが、分割されるのは2階部分だけですから、注意しましょう。

公的年金の仕組み
日本の公的年金の仕組み:厚生労働省公式サイトより

夫が自営業だった場合は

年金分割の対象は厚生年金ですから、夫が自営業だった場合には分割対象となる年金がありません。
つまり、年金分割を受けられるのは、厚生年金に加入している会社員や公務員の妻ということです。

そのため自営業者の妻は、財産分与をしっかりと受けることなどで、老後に備える必要があるでしょう。

企業年金や国民年金基金は分割されない

年金には公的年金以外にも、企業年金や国民年金基金などがあります。これらは公的年金で不足する部分を補う役割を持っていますが、年金分割の対象とはなりません。

離婚時の財産分与の対象にできる可能性はありますから、詳しくは弁護士などの専門家へ確認しましょう。

婚姻期間分のみ分割対象

年金分割の対象となる厚生年金は、婚姻期間に納付した部分のみです。
法的な婚姻関係がない事実婚の場合は第 3 号被保険者期間のみを対象として年金分割が受けられます。

分割割合は最大で50%

婚姻期間に支払った厚生年金部分しか分割されないのですから、できる限り多くの割合を受け取りたいところですが、分割される割合は最大でも50%です。

合意分割と3号分割

年金分割は、2007年の厚生年金保険法改正によりスタートし、その後2008年に強制分割制度がはじまりました。

現在、年金分割の方法には、夫婦間の合意にもとづく合意分割と、専業主婦(第3号被保険者)が受けられる強制分割があります。

合意分割とは

合意分割は、離婚後に当事者間で年金分割に関する話し合いを行い、「年金を分割すること」と、「分割する際の割合」について合意することで請求手続きを行います。

話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所へ審判や調停を申し立てられます。

合意分割の特徴
  • 分割割合は話し合いで合意
  • 合意できない場合は家庭裁判所で分割の割合を決定

強制(3号)分割とは

強制分割は2008年4月1日以降の部分について、専業主婦が利用できる制度です。第3号被保険者である専業主婦が対象であることから3号分割と呼ばれます。
分割割合は50%と決まっており、相手の合意がなくても請求できます。

合意分割とは異なり、事実婚でも請求可能です。

3号分割の特徴
  • 2008年4月1日以降に第3号被保険者であった部分のみ
  • 分割割合は必ず50%
  • 事実婚でも請求可能

合意分割と3号分割は併用可能

専業主婦にとって、手続きが簡単で分割割合50%が保証されている3号分割は魅力的なようですが、その期間は限られます。
2008年3月以前に婚姻期間があっても、3号分割できるのは2008年4月以降のみなのです。

この場合、2008年3月以前の部分については合意分割し、2008年4月以降部分については3号分割ができます。

離婚した場合の厚生年金の分割のイメージ
合意分割と3号分割併用のイメージ:厚生労働省公式サイトより

離婚後に元夫が死亡しても分割した年金は受け取れる

通常なら、受給者が死亡した時点で年金は停止となります。しかし、年金分割した場合には、元夫が死亡したとしても支給が続きます。

分割した年金の受給はいつから?

分割した年金は、分割を受けた妻が公的年金の支給年齢に達した時点で支給開始となります。元夫の支給開始年齢は関係ありませんので注意しましょう。

離婚時の厚生年金の分割イメージ
分割した年金の受給イメージ:厚生労働省公式サイト PDFファイルより抜粋

離婚時にすでに年金を受給している場合には、分割請求した日の翌月から分割がスタートします。

妻が夫に年金分割するケースもある

第 3 号被保険者は妻であることが圧倒的に多いですが、夫が主夫という家庭もあるでしょう。
そのような場合には、夫が妻の年金分割を請求することが可能です。

共働きの場合

夫も妻も年金分割を受ける可能性はありますが、共働きの場合はどうでしょうか?

夫も妻も働いて厚生年金に加入している場合は、厚生年金の多いほうが少ない方に分割します。
比べるのは婚姻期間中の厚生年金標準報酬額です。

また、共働きの場合には、夫も妻も3号分割は利用できません。

離婚したあと年金分割でいくらもらえる?

分割された年金は、自身の年金に上乗せするかたちで支給されます。
年金分割で実際に年金がどれくらい増えるのか、気になる方は多いでしょう。

「年金を分割してもらうのだから、老後も安心」と考えている方にとって実際の額は、少なすぎると感じるかもしれません。

合意分割でもらえる額の平均

厚生労働省発表の「平成29年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、合意分割を受けた人の年金は月平均31,058円(平成29年度)増えています。意外と少ないと感じるかもしれませんね。

離婚分割 受給権者の分割改定前後の平均年金月額等の推移
離婚分割・受給権者の分割改定前後の平均年金月額等の推移:厚生労働省資料より(PDFファイルが開きます)

3号分割でもらえる額

同じく厚生労働省発表の資料によると、3号分割のみの場合に増える年金額は、月平均で4,713円(平成29年度)です。3号分割スタートの2008年からあまり期間を経ていないこともありますが、思ったより少なく感じる方も多いことでしょう。

3号分割のみ・受給権者の分割改定前後の平均年金月額等の推移
3号分割のみ・受給権者の分割改定前後の平均年金月額等の推移:厚生労働省資料より(PDFファイルが開きます)

情報通知書で分割額の確認を

分割された年金は夫を介さずに直接妻に支払われるため、妻側から見ると、分割支払いの慰謝料などよりも確実に支払いを受けられる方法ともいえます。

ただし、分割額は思いのほか少ないことが想定されますので、必ず金額を確認し、足りない分は財産分与を請求するなどの措置を講じましょう。

実際の分割額は情報通知書で確認

年金分割の見込み額は情報通知書で確認します。情報通知書は離婚前でも請求できます。

妻一人でも請求できますから、自身の年金手帳と戸籍謄本などを用意して年金事務所へ問い合わせましょう。

年金分割しないとどうなる?

それでは、もしも離婚時に年金分割を請求しないとどうなるのでしょうか?

年金分割の請求には期限があります。また、妻へ年金を分割する夫側は年金が減りますが、基本的には請求の拒否はできません。

年金分割の請求は2年以内

年金分割の請求は離婚後でも行えます。ただし離婚をした日の翌日から2年以内に請求しなければなりません。

2年を過ぎそうな場合

離婚後、年金の分割請求をしないまま2年が経ってしまいそうな場合でも、審判や調停の申立てを2年以内にしていれば、特例として期限を延長できます。

年金分割の請求期限が迫っている場合は、弁護士などの専門家へ早めに相談しましょう。

年金分割を拒否できるか

年金分割をした夫は、もらえる年金額が減ってしまいます。離婚の理由や状況によっては、年金分割に納得がいかないケースもあるでしょう。

しかし、基本的には年金分割自体の拒否はできません。分割する割合を少なくしたいと考えても、妻が納得せずに裁判所へ審判を申立てれば、最終的には裁判所の決定に従わなければなりません。

離婚協議書でも3号分割は阻止できない

離婚協議書を作成し、「年金分割はしない」という内容を記載したとしても、3号分割は請求できることに注意しましょう。

再婚したら離婚時に分割した年金はもらえなくなる?

年金分割は、専業主婦などが離婚したあと老後の生活に困らないようすることが大きな目的です。しかし、離婚後に再婚してもいったん分割した年金は予定通りに受け取れます。

再婚しても影響なし

年金分割されたあと、再婚したり、再婚相手の扶養に入ったとしても、分割された年金は予定通り上乗せされます。

年金分割された方が死亡した場合

年金分割を受けた側である妻が再婚後に死亡した場合は、子や再婚相手へ遺族年金として支給されます。

離婚後の年金分割については弁護士に相談を

年金分割の対象は厚生年金のみで、その期間も限られます。

分割した年金だけで生活するのは難しいですが、その上乗せ分を合計すると大きな金額になりますから、年金分割の請求は忘れずに行いましょう。

年金分割について元配偶者ともめてしまったり、分割方法や割合で不明な点は、弁護士に相談して早めに解決することをおすすめします。

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