契約結婚とは?知るべき知識や離婚は可能か解説

TVドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」(逃げ恥)で主役の2人が行った「契約結婚」。
放映後はドラマ人気も相まって「契約結婚」という言葉や方法が注目されています。しかし、実際に契約結婚とはどんなものなのかよくわからないという人が多いのではないでしょうか。
このページでは契約結婚とはどういった状態を指すのか、また、現実面での問題点や離婚ができるかどうかなど契約結婚について知っておくべき内容を詳しく解説します。
契約結婚とは?

「契約結婚」とは、結婚する前に夫婦間で結婚後の約束事を決めることを言います。
ただし、法律で「契約結婚とは〇〇である」と定められているわけではありません。
しかし価値観の多様化に伴い、夫婦のあり方が大きく変化しているので、夫婦間で様々な取り決めを行った上で契約結婚をする人が増えています。
テレビドラマ「逃げ恥」で契約結婚の知名度が上がった
まずは人気ドラマ「逃げ恥(逃げるは恥だが役に立つ)」(2016年TBS系で放映)で描かれた契約結婚の形を見てみましょう。
「逃げ恥」は就職難で仕事が見つからない女性・森山みくりと人づきあいが苦手な独身男性・津崎平匡(ひらまさ)をめぐるストーリーです。
家事代行業を依頼していた平匡が代行業者を変えようと検討していたときに、派遣切りにあって仕事を探していたみくりを紹介され、採用しました。
やがてみくりは平匡に「給料を払って家事をする」という条件の契約結婚を提案します。最初は愛情がない2人で単なる「雇用主と従業員」という関係でしたが、次第に恋愛感情が芽生えるという物語です。
契約結婚と事実婚の違い
ドラマの中での契約結婚は婚姻届を出さない事実婚として描かれていますが、実際の契約結婚は必ずしも事実婚とは限りません。
婚姻届を提出して夫婦になるケースもあるし、婚姻届を出さずに事実婚のままの人もいます。
「〇〇でなければならない」といった決まりがないのが特徴です。
契約結婚で取り決める契約内容

契約結婚では事前に2人の間で何らかの契約を交わします。これも「〇〇について決めなければいけない」という決まりはありません。
それぞれの夫婦で話し合って契約内容を決めます。以下では契約内容の例をご紹介します。
- 結婚後も現在の仕事を続ける
- 家事は先に帰った方がやる
- 日曜日の午後はお互いに自由行動とし、束縛や詮索(せんさく)をしない
- 子どもが生まれたら夫婦ともに育児休暇を取り、1年間は子育てに専念する
- 生活費は夫婦が折半で負担する
- 家のローンと光熱費は夫が、食費と日用品が妻が負担する
- どちらかが不倫したら離婚する
このようにさまざまな内容を取り決めることができますが、夫婦の考え方や生活の状況に応じてお互いに納得できる内容にすることが大切です。
婚姻期間を決める契約結婚もある
ドラマ「契約結婚」(2005年フジテレビで放映)のように「〇年間だけの約束で結婚し、その期間が過ぎたら、その時点で婚姻を継続するかどうか決める」といった契約内容もあります。
契約内容に入れられないもの
一方で社会のルールや法律に反するものは契約内容に入れられません。
いくつかの例をご紹介します。
不貞行為を認めるもの
「婚姻届は提出するが、他に好きな人ができたらその人と同居する」「好きな人ができたら、週に〇回はその人の家で暮らす」という契約内容は「不貞行為」を認めるものになります。
不貞は不法行為であり、それを認めるような内容を契約に入れることはできません。
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生活費を入れない
共働きで「自分の給料はすべて自分で使う」という契約を考えたとしても、夫婦には相互扶助の義務があり、生活費を入れないのはそれに反するため契約に入れることはできません。
ただし、夫婦で家計の分担を決めることは問題ないので、住宅ローンや光熱費、食費などをそれぞれの収入で負担するように話し合うといいでしょう。
相続に関すること
相続に関しては法律でさまざまな取り決めがあります。
契約結婚で「自分が死んだとき、遺産は全額を子どもに相続させる」と決めても、配偶者は常に法定相続人になるため、遺留分(配偶者が得られる相続財産)を放棄するには裁判所の許可が必要となります。
このように相続に関することや法に触れることは契約内容に入れないように気をつけましょう。
補足:不貞行為などを認めるなら個人間で契約するしかない
最近は間に行政書士を入れるなどして契約書を作成した上で契約結婚をする夫婦もいますが、上述した内容は契約に入れることができません。
しかしどうしても契約内容に入れたい場合は、第三者を交えた場であれば個人間で契約書を交わしたり、契約を結ぶことが可能です。
ただこの場合は法的な拘束力などはなく、仮にどちらかが契約に反することをしても、それを元に訴訟をすることなどは難しいようです。
契約結婚と偽装結婚の違い

契約結婚はここまでで説明したように、婚姻の意思がある2人が結婚生活についての取り決めを設けて契約書を交わすことを言います。
一方、偽装離婚は婚姻の意思がないのに婚姻届を出すことを指します。
結婚したい意思の有無が、契約結婚と偽装結婚の違いと言えるでしょう。
偽装離婚の例
次のような目的があり、偽装結婚をすることがあります。
- 婚姻届を出して配偶者控除を受けたい
- 婚姻届を出して配偶者の扶養家族になり健康保険に入りたい
- ブラックリストに載って借金ができないが、結婚して姓が変わることで借金をしたい
例えば婚姻届を提出した夫婦であれば、どちらかの年収が少ない場合、配偶者の扶養家族となり配偶者控除や健康保険の加入などが受けられます。
しかし、結婚の意思がないのに配偶者控除や健康保険加入などを目的として婚姻届を提出することは偽装結婚と判断される可能性があります。
なお、事実婚は夫婦と認められず、本来は配偶者控除や健康保険に扶養家族としての加入は認められていません。ただ、事実上婚姻関係と同じであると証明できれば認められることがあります。
偽装離婚は罪になるケースも
婚姻の意思がないのに結婚して姓を変えて借金するのは詐欺罪に問われることがあります。
また、婚姻の意思がないのに戸籍を書き換えると「公正証書原本不実記載罪」に該当します。くれぐれもご注意ください。
偽装離婚と疑われないための対策は?
婚姻届を出しているのにずっと別居している、夫婦は別会計で生計を共にしていないなどが発覚すると偽装離婚を疑われることがあります。
偽装結婚と疑われないためには、婚姻の義務である「同居」「扶助」「協力」の義務を果たすことが大切です。
傍から見ても普通の夫婦と同じようにしていれば、偽装結婚と見破られるリスクは大きく減ります。
契約結婚カップルの離婚は可能?

契約結婚も普通の結婚と同じなので離婚は可能です。
むしろ結婚生活に関する条件を事前に決めているので、「契約を破ったのだから、約束通り離婚しましょう」という話ができ、離婚の話し合いもスムーズに進む可能性があります。
契約結婚のメリット

契約結婚にはメリットもあればデメリットもあります。
まずはメリットから見ていきましょう。契約結婚には、次のようなメリットがあります。
- 結婚後のトラブルが少ない
- 配偶者控除が受けられる
- 不倫防止や浪費防止になる
結婚後のトラブルが少ない
交際中や婚約中はラブラブだったカップルでも、結婚するとお互いの欠点が見えてきてケンカになることがよくあります。
「もっと家事を手伝ってくれると思ったのに」「小遣いが少ない!」などの不満が出てきます。
しかし、契約結婚で事前に家事の分担や生活費と小遣いの金額などを決めておけばもめることがありません。
結婚後のトラブルを抑えられるという点は契約結婚のメリットだと言えるでしょう。
配偶者控除が受けられる
事実婚や同棲では正式な夫婦と認められないため配偶者控除などが受けられませんが、契約結婚であっても婚姻届を提出していれば夫婦と認められて税制面でのメリットがあります。
なお、事実婚や内縁関係であっても、それが証明できれば配偶者控除を受けられる場合があります。
不倫防止や浪費防止になる
「どちらかが不倫をしたら離婚する」とか「毎月の小遣いはお互いに〇万円まで」と結婚時の契約で決めておくと、お互いの不倫や浪費を防止することができます。
契約結婚のデメリット

一方、契約結婚には次のようなデメリットがあります。
- 周囲の理解が得られにくい
- 契約違反がきっかけで即離婚になりやすい
- 結婚後に契約内容の変更が難しい
周囲の理解が得られにくい
契約結婚は合理的ですが、まだまだ周囲の理解が得られにくいという問題があります。
「契約結婚をする」と知った互いの両親や親族から反対される可能性があるので、契約結婚であることは2人だけの約束としておき、周囲には普通の結婚と変わらないように説明するといいでしょう。
契約違反がきっかけで即離婚になりやすい
どちらかが契約違反をしたら、それがきっかけで「即離婚」になりやすいので注意が必要です。
例えばどちらかが約束を破ったら、それが元で2人の関係が悪化し、話し合う余地すらないということになりかねません。
特に子どもがいる場合は子どもの立場を考慮せずに離婚に踏み切ってしまう可能性があります。
契約は決めておいても結婚後に状況が変わることがあるので、柔軟に対応するように心がけましょう。
結婚後に契約内容の変更が難しい
2人の間での約束で「結婚後は月に1回は家族で外食する」などと決めていても、それが守れないということはよくあるものです。
しかし、「契約」として書面に記した場合、それが守られないことで夫婦関係に亀裂ができたり、契約内容の変更ができないという問題に発展することがあります。
例えば契約していた〇〇ができない状況になったとき、あなたは「それは仕方がないよね」と言えるような場面でも相手は「契約違反だから許せない」と怒り出すことがあるかも知れません。
また、「結婚して状況が変わったから〇〇の契約を変更しましょう」と言っても、相手が「契約したものはその通り実行すべきだ」と言って譲らないということも起こり得ます。
契約結婚ではない一般の結婚なら夫婦間の話し合いで解決できる問題が、「契約結婚」という形を取ったためにもつれて、関係がより悪化することがあるのです。
契約内容は法律ではなく、夫婦間の取り決めなので柔軟に対応するという気持ちをお互いに持つことが大切です。
契約結婚をするには

このような契約結婚のメリットとデメリットを知った上で契約結婚をする方法についてご説明していきます。
契約結婚をするには「結婚契約書」(婚前契約書ともいう)を作成します。
結婚契約書を作る
「結婚契約書」には、特に法律で決められた書式はありません。
2人で取り決めた契約内容を記入し、記入日(契約日)、2人の氏名、住所と押印があればOKです。
ただし、契約結婚として取り決めるのであれば、結婚前に書くことが重要です。
結婚契約書の書き方・記入例
結婚契約書の記入例をご紹介します。
こちらは一般社団法人 プリナップ協会がサイト内で紹介しているもので、誰でも無料でダウンロードできます。
この書式を参考に、それぞれのカップルで相談して決めた契約内容を記入し、最後に日時と2人の住所、氏名と押印をします。
なお、記入例はわかりやすくするために赤い文字で書いていますが、実際には黒いボールペンでご記入ください。(消えるペンはNGです。)

書式参照:一般社団法人 プリナップ協会
http://www.konzenkeiyaku.com/dl/
結婚契約書の作成代行を依頼する場合は行政書士か弁護士へ
いざ自分で書くとなると、「書き方がわからない」「これでいいのか不安」「不備がないか」などの心配が出てきます。
そんなときは行政書士や弁護士に依頼することも可能です。後でトラブルにならないようにアドバイスを受けながら進めていきましょう。
契約結婚でよくあるQ&A

契約結婚でよくあるQ&Aをご紹介します。
Q:契約違反をしていないときは離婚できませんか?
彼とは契約結婚をしました。お互いに決めた契約内容は守っていたのですが、彼に対する愛情がなくなり、離婚したいと考えています。
お互いに契約違反をしていないときは離婚はできないのでしょうか。また離婚するにはどうすればいいですか?
A:夫婦で話し合って離婚を進めることができます
たとえ契約結婚であっても、さまざまな理由で離婚に至ることがあります。そのときは普通の結婚と同様に協議して離婚を決めます。
協議離婚で話がまとまらない場合は離婚調停を行います。
なお、婚姻届を提出していない事実婚の場合は特に手続きは不要です。
契約離婚とは~まとめ

契約離婚は特に法的な決まりはないので、2人にとって必要と思える内容を決めればOKです。
契約の内容や結婚契約書の書き方がわからないという場合や既に契約結婚をしていて、離婚などの不安がある場合は弁護士に相談してみましょう。
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