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不貞行為とはどこから?浮気との違い、判例を用いて解説

不貞行為とはどこから?浮気との違い、判例を用いて解説

不貞行為とは、配偶者(結婚相手)のある者が配偶者以外の者と性的関係を持つことを指します。

当記事ではどのような行為が不貞行為に該当するのか、また離婚原因として当てはまるケースを実際の判例をもとにご説明しますので参考にして下さい。

不貞行為の法的定義

法律上の不貞行為とは

不貞行為とは

不貞行為は刑事罰の対象ではありませんが、民事上では不法行為として扱われ、慰謝料の請求対象となることがあります。

不貞行為が民事上の違法行為とされるのは、婚姻関係における信頼と義務を侵害するためです。日本の民法では、不貞行為による損害賠償責任を定める条文として、民法709条があります。これにより、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者は、その損害を賠償する責任があります。

また、民法770条では、不貞行為を離婚の事由の一つとして挙げており、配偶者に不貞な行為があった場合には、離婚を求めることができます。

不貞行為を証明できれば慰謝料請求も可能です。不貞行為とみなされるのは、次の場合です。

対象 ・結婚している人
・内縁関係にある人
・婚約している人
相手 配偶者以外(内縁関係の相手、婚約者)の異性
行動 性行為

不貞行為の証明には肉体関係の証拠が必要ですが、キスや手をつなぐ行為など、肉体関係に至らない行為は通常、不貞行為とは見なされません。
ただし、これらの行為が夫婦関係を侵害すると判断される場合、不倫類似行為として慰謝料請求の対象となることもあります。

慰謝料の相場は、状況によって大きく異なりますが、一般的には数十万円から数百万円の範囲で決定されることが多いです。

内縁関係や婚約中でも不貞行為になる!

不貞行為は結婚している人が配偶者以外の異性と性行為をすることを指しますが、内縁関係や婚約中の場合も対象になります。

内縁関係とは

内縁関係とは、婚姻届は出していないものの夫婦と同じように生活している男女のことを指します。事実婚も同じ意味で、婚姻の意思を持ち、生計を共にして、夫婦と同じように一緒に暮らす関係であれば内縁関係(事実婚)と判断されます。

ただ、婚姻の意思がないが一緒に暮らす場合は内縁関係とは言えず、同棲関係とみなされます。

また、内縁関係(事実婚)の場合は住民票に「見届の夫(妻)」と記入することがあります。この場合も内縁関係(事実婚)が認められます。

内縁関係にも「貞操義務」が認められているため、別の異性と性行為を持つと不貞行為となります。

内縁関係のカップルでの不倫についてはこちらの記事でご説明しているので、合わせてご覧ください。

婚約中とは

次のように「婚約していたこと」が客観的に証明できる場合を「婚約中」と言い、婚約者が別の異性と性行為を持った場合は婚約破棄と浮気に対する慰謝料請求、結婚式の費用などの損害賠償請求ができます。

  • 結納を交わしている
  • 婚約指輪を贈った(ファッションリングではなく婚約の意味を示すものであること)
  • 結婚式場・披露宴会場を予約し、お金を納めた
  • 親戚や友人に結婚式・披露宴の招待状を送った
  • 女性が結婚生活に入るために仕事を退職した

ただし口約束で「結婚しようね」と言っていた場合や、どちらかが一方的に「この人と結婚する」と思い込んでいた場合などは「婚約中」とは判断されず、相手が浮気をしても慰謝料請求の対象にはなりません。

婚約中の浮気に対しての慰謝料請求については、こちらの記事で詳しくご説明しています。

不貞行為と不倫・浮気の違い

ちなみに不貞行為によく似た言葉に「浮気」や「不倫」があります。これらはどう違うのでしょうか。

不倫との違い

不貞行為は法律的な定義があり、肉体関係を伴う行為を指します。

一方で、不倫は道徳的な観点から使われることが多く、法律用語ではありません。
結婚している人が配偶者以外と恋愛関係にあることを指し、必ずしも肉体関係を伴う必要はありません。

不倫は社会通念上、許されない関係とされることが多いですが、不貞行為と異なり、直接的な法的な結果を生じさせるわけではありません。

浮気との違い

浮気についても触れておくと、これも法律用語ではなく、配偶者や恋人がいるにも関わらず、他の異性に心が移った状態を指します。
浮気は、恋愛感情や性的関係を伴うことなく、軽い気持ちで行う恋愛行動を指すことが多く、肉体関係がなくても成立する可能性があり、不貞行為よりも広い概念です。

不貞行為は法律的な定義があり、肉体関係を伴う行為を指します。不倫は肉体関係がなくても成立する可能性があり、浮気は心の移り変わりを指すことが多いです。不貞行為は民法上の不法行為として扱われるのに対し、不倫や浮気はそうではないという点が大きな違いです。

なお、不倫と浮気の違いについては、こちらの記事で詳しく説明しています。

不貞行為の境界線

不貞行為とされる具体的な行動

不貞行為と不倫・浮気の違いがわかったところで、次は不貞行為に該当するのはどのようなケースなのかを見ていきましょう。

不貞行為に該当する具体的な行動例は以下の通りです。

  • 配偶者以外と肉体関係を持つこと
  • 風俗などの一度きりの関係ではなく同じ相手と継続して関係を持っている
  • 配偶者以外と同居(同棲)していること
  • ラブホテルで長時間2人きりで過ごすこと
  • 酔った勢いで肉体関係に及ぶこと
  • 不貞行為を証明する証拠がある

配偶者以外と肉体関係を持つこと

不貞行為であるかどうかは「性行為(肉体関係)があるかどうか」で決まります。

夫婦には貞操義務がありますが、配偶者以外の相手と性交渉を行うという行為そのものが貞操を破るものであり不貞行為とみなされます。

風俗などで一度きりの関係ではなく継続して関係を持っている

風俗などで異性と性交渉を持った場合、そのときだけ、一度だけという程度では離婚事由には該当しません。慰謝料請求も難しいでしょう。

ただ、同じ風俗相手と何度も肉体関係がある場合は不貞行為となり、離婚や慰謝料請求が認められます。

配偶者以外と同居(同棲)していること

不倫相手の家で同居しているという場合は性行為があると考えられます。それを証明できれば離婚・慰謝料請求が可能です。

ただ、不貞行為に至る前に婚姻関係が破たんしている場合は慰謝料請求はできません。

ラブホテルで長時間2人きりで過ごすこと

ラブホテルは、性的行為を行うための場所として広く知られている為、パートナーが配偶者以外と2人でラブホテルに入り、長時間出てこなかった場合も、肉体関係があるかどうかに関わらず、不貞行為とみなされます。

酔った勢いで肉体関係に及ぶこと

酔った勢いで肉体関係に及んだ場合も、自由意思があったと認められるため、不貞行為とみなされます。ただし、相手に抵抗できない状態で行われた場合には、自由意思が認められない為、離婚事由には該当せず、慰謝料請求も難しくなります。

不貞行為を証明する証拠がある

不倫相手がいて、性行為を続けていると思っていても、それを証明する証拠がないと慰謝料請求はできません。

しかも証拠は「ラブホテルに出入りする写真や動画」「性行為の音声」「ホテルや相手に贈ったプレゼントの領収書(クレジットカードの利用明細書)」など、確かに性行為があるとわかるものであることが重要です。

不貞行為の証拠については、こちらの記事が参考になります。

これらは一般的な例であり、不貞行為の判断は個々の事情によって異なる場合があります。
この辺りの証拠を集める場合、弁護士でなく浮気調査に特化した興信所や探偵に依頼するのが最適です。

弁護士と同様に初回相談は無料で対応しているところもありますし、「探偵広場」のようなポータルサイトを活用すれば国に許可を取り探偵業法を遵守した事務所に依頼できます。

定額プランなどもありますので、不貞行為を疑っている方は一度相談をしてみても損はないでしょう。

参考:探偵広場(外部リンク)

不貞行為に該当しないケース

パートナーに疑わしい行動があったとしても、不貞行為に該当せず、離婚・慰謝料請求が認められないケースは、以下のような状況を指します。

  • キスや腕組み、腰に手をまわす、ハグするなどの行為だけの場合
  • メールやLINEのやりとりのみで、肉体関係を伴わない場合
  • 食事やドライブ、映画などのデートだけの場合
  • 心神喪失状態や強要された肉体関係の場合
  • 夫婦関係が完全に破綻した後の肉体関係の場合

キスや腕組みなどの行為だけの場合

キスや腕組みは、一般的に不貞行為とは認められないとされています。これらの行為は、性的な肉体関係にはあたらないため、不貞行為には含まれないと考えられており、慰謝料請求の対象とはなりません。

メールやLINEのやりとりのみで、肉体関係を伴わない場合

メールやLINEで「愛してる」など愛の言葉を交わしていたとしても、不貞行為とは言えません。

食事やドライブ、映画などのデートだけの場合

メールやLINEのやりとりと同じく、それだけでは不貞行為とは言えません。

心神喪失状態や強要された肉体関係の場合

性行為があったとしても強姦された場合は、不貞行為に当たりません。
ただし無理やり肉体関係を持った場合は(強姦した側)、不貞行為に当たります。

夫婦関係が完全に破綻した後の肉体関係の場合

不貞行為があったとしても、その時点ですでに夫婦関係が破たんしていた場合は慰謝料請求が認められないことがあるので注意しましょう。

実際に不貞行為で離婚し慰謝料を獲得できた判例

職場のOLと5年間不貞行為を続けた夫と離婚

(夫:40代前半、妻:30代後半、子ども1人の判例)

私はまだ幼い子どもの育児と家事に疲れて、夫の変化に気づいていませんでした。夫の休日出勤が増えても「忙しいんだな」と思う程度です。

しかし、クレジットカードの支払い額が増えたことを不審に思い支払い明細書をチェックしたところ、宝石店での買い物が発覚しました。「怪しい」と思い、夫の様子を観察していると休日出勤と言っているのにカジュアルな服装で出かけていきます。

疑いの目で見ると怪しい点が次々と現れ、不倫を確信。探偵事務所に依頼して証拠を押さえ、離婚を切り出しました。弁護士にも相談し、証拠を突き出したところ夫は観念し、職場のOLとの不倫を告白。離婚に応じました。

その結果、慰謝料として300万円を獲得しました。

W不倫をした妻と離婚 相手の男性にも慰謝料請求

(夫:40代後半 妻:40代前半、子ども2人の判例)

妻はパートで働きながら学校のPTAの役員も張り切ってやっていました。子どもの学年が上がるとPTAの広報部長になり忙しそうで、休日や夜間も「会議がある」と言って出かけることが多くなりました。

あるとき、学校行事に自分も参加したところ、妻はPTA役員の男性(子どもの同級生の父親)と親しそうに話していたのです。ときには身体が触れ合うほどに距離が近いこともありました。

妻が入浴中にスマホを見ると、その男性とデートの約束をしているLINEを見てしまいました。その画面を撮影したり、それとなく後をつけたりして自分でも証拠を集めましたが、決定的な証拠を押さえるために探偵事務所に依頼しました。

また、相手にも家庭があることから、どのタイミングで離婚を切り出すかを弁護士に相談して準備を進めました。

証拠を出し、弁護士もついていることを話すと妻は泣き崩れましたが、私は許す気にはなれず裁判になりましたが、妻の言い訳は認められず離婚が成立。

相手の男性から慰謝料として200万円、妻から100万円(実際は妻の親が支払う)を受け取りました。

婚約中の彼が浮気!慰謝料と損害賠償を請求

(男性:30代前半 女性:20代後半の判例)

5年間つきあった彼と婚約をしました。結婚式場や新婚旅行の予約も済ませ、お金も支払っており親戚や友人にも招待状を送り、準備は着々と進んでいました。

ところがある日、共通の友人から「彼が浮気しているかも?」という情報が入りました。「まさか!」と思いましたが、調べたところ1年前から二股かけていたようです。

相当深い仲になっているようだったので婚約は破棄し、予約していたものはすべてキャンセルしました。親にも泣かれ、散々です。

友達の協力を得て証拠が押さえられたので、それをもとに慰謝料として200万円、式場などのキャンセル料を損害賠償として300万円、合計で500万請求しました。

親も怒り心頭で弁護士に依頼してくれたこともあって、請求通りの金額を受け取ることができました。

不貞行為とは|まとめ

今回は不貞行為とは、法律的にどのような状況を指すのか、またどのラインから離婚事由として認められるのか解説しました。

不貞行為を理由に離婚したり、慰謝料請求したりする場合は有効な証拠が必要です。十分な証拠がないと慰謝料が減額されたり、不貞行為そのものが認められない場合があるので事前にしっかり証拠を押さえることが大切です。

また、慰謝料請求や離婚を切り出す場合は弁護士に相談しながら進めると有利に運べます。

最近は無料相談をしている弁護士事務所も多いので、相談がスムーズに進みやすいお近くの事務所にまずは話だけでも聞いてもらうと良いでしょう。

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