児童手当を離婚協議中に受給したり受給者を変更することは可能?
児童手当は子育て世帯にはとても助かる制度ですが、離婚に向けて話し合っているときは誰が受給できるのでしょうか。
また、受給者を変更することは可能なのか、詳しく解説します。
児童手当とは
児童手当とは15歳(中学校卒業)までの子どもを養育する人を対象に、国から支給されるものです。
受け取れる人や対象となる子どもに関して次のような条件があります。
児童手当を受け取れる人
児童手当が受け取れる(受給者)は子どもを養育している親で、「生計中心者」です。
生計中心者とは
生計中心者とは、一家の中で所得が高く、生計を主に営んでいる人を指します。
父母が共働きしている場合は、所得の高い方が「生計中心者」となり受給者になります。
一般的には対象となる子どもを扶養家族にして、その子が健康保険に加入しているなどの状態を指します。
ケース別~児童手当を受け取る人の条件
児童手当は、次のようにケースによって受け取れる人が異なります。
- 子どもの両親が別居している場合は、子どもと同居している方に支給
- 両親が海外で生活している場合は、両親が指定した人に支給
- 子どもに未成年後見人がいる場合はその人に支給
- 子どもが施設に入所している場合は施設の設置者に支給
- 子どもが里親に養育されている場合は里親に支給
この記事のテーマである「離婚協議中で夫婦が別居している場合」は上記①に該当し、子どもと同居している方に支給されます。
子どもが海外に留学している場合は?
児童手当の支給対象となる子どもは日本国内に居住していることが条件ですが、海外留学中の場合は次の条件を満たしている必要があります。
- 過去6年間で3年以上日本に居住していること
- 教育目的での留学(海外移住)であること
- 海外で両親と同居していないこと
- 海外に行ってから3年以内であること
離婚協議中の児童手当は誰に支給される?
離婚協議中は、子どもが誰と同居しているかで支給される人が変わってきます。
離婚協議中で別居しているとき
夫婦が別居しているときは上でも書いた通り、「子どもと同居している方」に支給されます。
A:生計中心者と子どもが同居している場合→それまで通り、生計中心者に支給される
B:生計中心者と子どもが別居している場合→子どもと同居している人に支給される
Bの場合は受給者変更手続きが必要になります。次にそのことについてご説明します。
児童手当受給者変更の手続き方法
児童手当受給者変更の手続きは、現在支給されている市区町村役所に次の書類を持って行きます。
- 印鑑
- 児童手当・特例給付の受給資格に係る申立書
- 離婚協議中であることがわかる書類
- 顔写真付き本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
児童手当・特例給付の受給資格に係る申立書の記入方法
「児童手当・特例給付の受給資格に係る申立書」は役所にありますし、各自治体のホームページからダウンロードすることもできます。
記入方法をご説明します。
- 提出する日
- 提出する市区町村名
- 申立人(自分)の住所
- 申立人(自分)の氏名と押印
- 自分と同居している子どもの氏名と生年月日
- 子どもと別居している配偶者の氏名、生年月日、住所、勤務先名、続柄
- 「離婚協議中につき別居している」の□にレ点でチェックする
- 「配偶者との別居に係る状況を証明する書類」の「別添」の□にレ点でチェックする
自治体によって若干形式が異なります。また、わかりやすくするために赤い文字で書いていますが、実際は黒のボールペン(消えるタイプはNG)でご記入ください。
(押印は本人が署名した場合はなくても構いません)
離婚協議中であることを示す書類とは
離婚協議中であることがわかる書類は、次のいずれかを提出します。
- 離婚協議申入れに関する内容証明郵便の謄本
- 家庭裁判所で発行される事件係属証明書
- 調停期日呼出状の写し
- 離婚裁判に係る訴訟状の写し
- 弁護士から申請者への離婚協議の進捗状況に係る報告書
また、自治体によっては「離婚協議中であることの申立書」が必要になる場合があります。
こちらも書き方をご説明します。
- 申立内容(誰と別居中であるか、離婚協議中であることを記入)
- 離婚協議を始めた時期
- 別居をした日
- 提出日
- 申立人(自分)の氏名、住所、電話番号
別居とは住民票が異なることが条件
「現在の受給者(父親)と子どもが別居している」とは住民票が別であること、または世帯分離していることが条件になります。
別居の状況によっては児童手当の受給者変更が認められない場合があります。
受給者の変更が認められない別居のケース
たとえ父親と子どもが別居していても、次のケースでは児童手当受給者変更が認められません。
- 父親が単身赴任で別居している
- 協議離婚と関係なく別居している
- 協議離婚中であることが公的な書類で確認できない場合
例えば、一時的に夫婦がケンカをして怒った母親が子どもを連れて出て行った場合や、夫婦間で離婚の話し合いはしていても公的な書類がない場合は協議離婚中であることが証明できないため認められないので注意しましょう。
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児童手当の受給者変更が認められた後の手続き
児童手当の受給者を現在の父親から母親に変更する申請(申立て)が認められたら、次は母親が現在住んでいる市区町村の役所に児童手当認定請求を行います。
児童手当認定請求の方法
役所に次のものを持参し手続きを進めましょう。
- 印鑑
- 母親名義の預金口座番号がわかるもの(通帳またはキャッシュカード)
- 母親の健康保険証
- 母親の個人番号が確認できる書類(マイナンバーカードや通知書)
- 母親の顔写真付き本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
なお、こういった手続きは申立人(申請者)本人が行く必要があります。誰かに代理を頼むことができないので注意してください。
離婚協議で別居中の児童手当でよくあるQ&A
では、離婚協議で別居中に児童手当受給に関してよくある疑問についてお答えします。
Q:まだ離婚協議は始めていないが離婚を前提に別居した場合は?
夫の暴力に耐えかねて子どもを連れて家を出ました。児童手当は夫が受給しています。まだ離婚協議は始めていませんが、離婚を前提に考えています。この場合、妻が児童手当を受給することはできるでしょうか?
A:夫に「離婚協議申入書」を送付していれば大丈夫です
このケースで妻が子どもの児童手当を受給するには、「離婚協議中の別居」であることが条件になります。
それを証明するには、例えば夫に「協議離婚申入書」を送付していればその写しで証明できます。送付するときに「内容証明郵便」にしておくと謄本があるので安心です。
相手(夫)のDVが原因なら暴力や暴言、脅迫などを受ける可能性があります。離婚についての相談も含めて弁護士に依頼するといいでしょう。
なお、「児童扶養手当」は離婚が成立してから受け取れるものですが、婚姻中でも夫がDVで夫に「保護命令」が出ていれば離婚が成立していなくても妻が受け取ることができます。こちらも合わせて弁護士に相談してみましょう。
Q:夫と別居して妻が児童手当の申請をしたら、いつから受給できる?
夫と離婚協議中で別居し、子どもは自分(妻)が引き取っています。別居先の自治体に児童手当の申請請求をしたら、いつから受け取れるでしょうか?
A:申請した月の翌月分から支給
申請した月の翌月分から支給されます。例えば、7月に申請したら、児童手当は8月分から受け取れます。
ただし、転入日が月末に近くて申請が翌月に入ってしまった場合は異動の翌日から15日以内であれば申請した月の分から受給できます。
(例)7月28日に転入(引っ越し)して児童手当の申請請求が8月2日になってしまったという場合、異動(引っ越し)から15日以内なので申請した月(8月)から受給できます。
ただし、申請が遅くなっても過去にさかのぼって受給できないので注意してください。
詳しいことは自治体の窓口で確認してみましょう。
Q:別居と同時に公務員を辞めた場合の手続きはどうすればいい?
婚姻期間中は夫も妻も公務員として働いていましたが、離婚の協議を進めていて妻は公務員を退職し、子どもを連れて別居しています。別居後はパートとして働いていますが、妻が児童手当を受け取るにはどうすればいいですか?
A:居住する自治体で手続きをして下さい。
公務員は市区町村からではなく職場から児童手当が支給されます。別居する前は夫が勤務先から受給していたはずです。しかし、別居して妻が受け取る場合、公務員を退職したのであれば、次のように手続きを進めます。
- 夫の勤務先に「児童手当の受給資格消滅手続き」を行う
- 妻が居住する自治体に「児童手当の受給資格に係る申立て」を行う
- ②が認められたら児童手当の認定請求を行う
なお、妻が公務員を続けている場合は①の手続きをしてから自分の勤務先に児童手当を申請します。
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離婚協議中の別居での児童手当について~まとめ
児童手当は夫婦のうち所得が多い方(生計中心者)に支給されますが、夫婦が離婚協議のために別居した場合は同居している方の親が受け取れます。
その場合は役所に「児童手当・特例給付の受給資格に係る申立書」と「離婚協議中であることがわかる書類」を提出する必要があります。
まだ離婚が成立していなくても、子どもを引き取った方は子どもを養育するためにきちんと児童手当を受け取れるようにしましょう。離婚協議中を証明する書類がない場合や具体的に離婚協議が進んでいない場合は弁護士に相談してみましょう。
特に子どもを連れての離婚には親権や養育費などの問題も絡んでくるので、早めに専門家に相談する方がスムーズに進められるのでおすすめです。
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