夫(妻)のうつ病で離婚!慰謝料請求はできる?相場や養育費も紹介!
うつ病は「何をするにも意欲がない」「どんなことにも興味を示さない」といった精神活動の低下や不眠、不安の持続などが特徴の精神障害です。原因はさまざまで、大きなストレスや環境の変化、仕事の失敗や対人関係、失業などが関係すると言われています。
うつ病の患者数は近年増加していて、罹患した本人も大変ですが、周囲の人も一緒に生活をすることで苦しい思いをします。
最初はうつ病になったパートナーを支えていた人でも、家庭内が暗くなる、子育てができない、仕事に行けず収入が激減したなどの理由で離婚を考えたというケースがは多いです。
そこで今回は配偶者のうつ病が原因で離婚したときに、慰謝料の請求ができるのかどうかや相場、養育費についてご紹介します。
配偶者のうつ病が理由で離婚は可能?
協議離婚や調停なら離婚は可能
協議離婚や離婚調停はお互いの話し合い(調停の場合は調停委員の仲介を経て)で離婚を決めるので、基本的にどのような理由でも離婚は可能です。
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そのため、配偶者がうつ病でも双方の話し合いで合意すれば離婚すること自体は可能だと言えます。
離婚裁判はうつ病での離婚は難しい!?
一方、裁判で離婚を決める場合は、「法定離婚事由に該当している」という条件があります。
法定離婚事由とは下記のものを指します。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意の遺棄をされたとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他、婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
うつ病は法定離婚事由に該当する?
ではうつ病は裁判で、法定離婚事由の中の「強度の精神病にかかり、回復の見込みがない」とみなされるのでしょうか?
実は裁判で「強度の精神病で回復の見込みがない」と認められるのは「総合失調症」「認知症」「躁鬱(そううつ)病」「アルツハイマー病」などです。しかもこれらの病気でも医師の診断書などを提出しても、裁判では離婚が認められないケースが多いのが現実です。
そのため、「うつ病」を理由に裁判で離婚するのはかなり困難だと言えます。なお、アルコール中毒や薬物中毒、ヒステリー、ノイローゼなどは法定離婚事由としては認められていません。
ただし精神病やアルコール中毒、薬物中毒が原因でDVを受けた場合は、「その他、婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められることがあります。
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配偶者のうつ病で離婚が難しい理由
このように配偶者がうつ病になっても離婚が難しい理由には、民法第752条で「夫婦には相互扶助・協力の義務がある」と定められているからです。
民法第752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
このことから配偶者がうつ病になったら夫、または妻は治療や家事などで助けるべきであると考えられています。
それでも離婚を主張する場合は、自分が配偶者のうつ病で看病した記録や治療に同席・同行した記録、周囲に相談したかどうかなど、本当に協力したがどうしようもなかったことを示す必要があります。
配偶者がうつ病で離婚する場合に配慮すべき点
どうしてもうつ病の配偶者と離婚したい場合、離婚した後にうつ病の配偶者が生活できるような一定の財産分与を行ったり、家族に同居してもらう手続きを取る、精神障碍者保健福祉手帳の交付や障害者年金受給の手続きをするなど、出来る限りの対策を講じることが大切です。
そこまでしてもなかなか離婚は認められませんが、少しでも進めやすくするための対策が必要になります。
うつ病の配偶者との離婚で慰謝料の相場は?
うつ病で収入がない場合は慰謝料請求は困難
うつ病の場合は仕事に行けないことが多く、収入がありません。そのため、離婚をしても慰謝料請求をするのは困難だと言えます。
つまり、うつ病の配偶者との離婚では「慰謝料の相場」そのものが存在しないと言っていいでしょう。
ここまでで説明してきたようにうつ病の配偶者と離婚するのはかなり難しく、そもそもうつ病を患っている配偶者の場合、症状の重さによっては話し合いを進めるのすら困難です。
大変厳しい話になりますが、法律的には慰謝料を請求するどころか、むしろ自分が財政的な支援をしなければいけないケースもあるということを理解しておきましょう。
うつ病以外の理由で慰謝料請求するのは可能
前述した通りうつ病そのものが原因で離婚した場合、慰謝料請求は難しいです。しかし相手がうつ病の影響でDV(暴力や暴言、モラハラなど)をしており、別居が続いている。あるいは配偶者が犯罪をして服役している、といった場合は「その他、婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しますので、それを理由に離婚をすることは可能です。
なお、本来であればDVや正当な理由がない別居、犯罪で服役している、性の不一致などは慰謝料請求に該当する離婚事由ですが、現実的にうつ病の配偶者が慰謝料を支払うのは難しい問題です。
うつ病の配偶者との離婚で親権や養育費はどうなる?
うつ病の配偶者と離婚する場合、子どもがいる夫婦では親権や養育費も気になるはずです。親権には「身体監護権」と言って、居住指定権、懲戒権(子どもをしつける)、職業許可権、そして「財産管理権」があります。
つまり、親権を持つ方は子どもを適切に監護・教育し、財産を管理しなければなりません。しかし、うつ病で自分の生活すら心もとない人に子どもの教育や監護を任せることはできません。
一般的に父親よりも母親の方が子どもの教育や成長の見守りに適切であると判断され、親権を取るケースが多いのですが、母親がうつ病で離婚する場合は父親が親権を得るケースがあります。
うつ病で離婚した場合は養育費の請求が困難
養育費は親権を持たない義務者が、親権を得る権利者に離婚後も子どもがそれまでと同程度の生活ができるようにするため支払うものです。
養育費の金額は義務者の年収と権利者の年収、子どもの年齢で算出されますが、相手(義務者)がうつ病で働けず収入がない場合は養育費の請求はも難しくなります。
ただ義務者に資産や財産がある場合、そこから養育費を支払ってもらうことは可能です。判断は裁判や双方の話し合いなどで決めていきます。
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うつ病で話し合いが困難な場合は成年後見人を立てる
うつ病で会話ができない、意思の疎通が難しい、正当な判断ができないという場合、離婚の話し合いがスムーズに進まなくなります。
この場合は「成年後見人」を申し立てて話し合いを行うのが一般的です。成年後見人は一般には信頼できる親族、または行政書士や弁護士が選定され、うつ病の本人の代わりに調停や裁判などに出席します。
成年後見人を申し立てるかどうかも含め、うつ病の配偶者との離婚はさまざまな問題が絡むため、ひとりで悩まずに弁護士に相談して解決を図っていきましょう。
配偶者のうつ病が原因で離婚~慰謝料の相場~まとめ
配偶者がうつ病になると、妻(夫)も最初は頑張って応援してもやがて限界を感じ、離婚を考えるケースは多いです。
その場合、協議や調停なら離婚が可能ですが、夫婦には「同居、協力、扶助」の義務があり、法定離婚事由にも直接は該当しないため、裁判で離婚を認めてもらうのは難しいのが現実です。
ただ、うつ病の配偶者からDVを受けた、別居を余儀なくされた、生活費が得られないなどがあると、法定離婚事由に該当し離婚が認められることもあります。
慰謝料や養育費に関しては記事内でも触れた通り、うつ病で働けない=収入がないということなので、請求するのは困難でしょう。
うつ病による離婚は通常の浮気や性格の不一致による離婚と違い、特殊性が高くケースバイケースで対応も異なるので、ひとりで悩まずまずは弁護士に無料相談することをおすすめします。
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