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婚姻を継続し難い重大な事由とは?事由一覧や過去の判例、慰謝料も紹介

婚姻を継続し難い重大な事由とは?事由一覧や過去の判例、慰謝料も紹介

離婚が認められる理由のひとつに「婚姻を継続し難い重大な事由」があります。難しい言葉ですが、離婚をするには知る必要のある言葉です。

そこで当記事では婚姻を継続し難い重大な事由とは、どんな事由なのか紹介しつつ過去の判例や慰謝料の例についてご説明します。

婚姻を継続し難い重大な事由とは?

婚姻を継続し難い重大な事由_とは_一覧

「婚姻を継続し難い重大な事由」とは、法定離婚事由(民法という法律で認められている離婚の理由)のひとつです。

ちなみに法定離婚事由には次の5つがあります。

  • 不貞行為
  • 悪意の遺棄
  • 3年以上生死不明
  • 強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと
  • 婚姻を継続し難い重大な事由

たとえば「不貞行為」とは「不倫」のことで、単なる食事やドライブといったデートではなく性交渉がある場合が対象になります。

また、「悪意の遺棄」は理由もなく別居する、生活費を渡さないなどを指し、「3年以上生死不明」というのは警察に捜索願を出し、自分でも一生懸命探したけれど見つからなかった場合のことです。

では、「婚姻が継続し難い重大な事由」とはどんなケースを指すのでしょうか。

婚姻が継続し難い重大な事由に該当するケース

「婚姻が継続し難い重大な事由」とは、それが原因で結婚生活が続けられないということで、次のケースが該当します。

  • DV(暴力やモラハラ)
  • 健康なのに働こうとしない
  • ギャンブルや浪費
  • 多額な借金
  • 限度を超える宗教活動
  • 性の不一致、セックスレス
  • 犯罪行為

DV(暴力やモラハラ)

配偶者に対する暴力や言葉の暴力(モラハラ)を含めてDV(ドメスティックバイオレンス)と言います。

殴る、蹴るといった身体的な暴力だけでなく、「バカ」「ブス」「何もできない無能だ」といった言葉を投げかけたり、性行為を強要したりといったこともDVに該当します。

健康なのに働こうとしない

夫婦は互いに協力し、助け合う義務があります。生活費に関しても同じで、健康であれば働いて生活費を出すべきです。

夫婦の話し合いで「自分が稼ぐから、あなたは主婦(主夫)として子育てと家事をしてください」と決めた場合はいいのですが、そうではなく健康なのに働かずに生活費を払わない状況が長引くと離婚の理由として認められることがあります。

ギャンブルや浪費

ギャンブルにはまり借金をしたり、負けたときに家族に暴力をふるったり……といった行為や収入以上の買い物を続ける浪費癖などは離婚の理由として認められる場合があります。

多額な借金

収入から考えて、とても返済できないような高額な借金をした場合、その理由や状況によっては離婚が認められる場合があります。

限度を超える宗教活動

信教の自由はあるものの、限度を超える行動(子育てをせずに布教活動に出歩く、宗教活動に財産を投入し生活費を入れない(=悪意の遺棄)といった行為を指します。

性の不一致、セックスレス

ただ気分が乗らないということで相手の求めを断るというケースでは「性の不一致」や「セックスレス」には該当しませんが、相手が嫌がっているのに過激なプレイ(SMプレイなど)を要求したり、暴行まがいの行為をしたりという場合は「性の不一致」に該当します。

一方、お互いに健康でありながら長期間性交渉がなく、相手が不満に思う場合は「セックスレス」に該当しますが、それを証明したり、正当に判断したりするのは難しいです。

犯罪行為

配偶者が犯罪を犯したことで家族が離れ離れになった、夫婦間の信頼関係がなくなった……などで婚姻関係が破たんした場合が離婚理由に該当します。

婚姻を継続し難い重大な事由で離婚が成立した判例と慰謝料

このように「婚姻を継続し難い重大な事由」には多くのケースがあります。実際に離婚が認められた判例と慰謝料をご紹介します。

DV(暴力やモラハラ)で離婚になった判例

最近増加しているDV(配偶者からの暴力やモラハラ)は婚姻を継続し難い重大な事由に該当し、離婚が認められることが多くなっています。

一審で反省を促されたが夫の暴力が止まず離婚に

夫(40代後半)から暴力を受けていた妻(40代前半)は離婚調停を申立てますが、夫は離婚を拒否。そこで、妻は訴訟を起こしました。しかし、裁判では夫に離婚の意思がないこと、今後暴力をしないという姿勢を見せたことから「夫はよく反省し、夫婦関係を修復する」ように促されました。

ところがその後も夫の暴力は止まらず、むしろ「自分を訴えて恥をかかせた」とさらに妻に暴言を浴びせるようになりました。耐えきれなくなった妻は弁護士に依頼し、控訴しました。夫の暴力や暴言の様子を音声データに録音するなどの証拠があったことから控訴審で離婚と慰謝料請求が認められました。

なお、DVでの離婚や慰謝料請求に関してはこちらの記事で詳しくご説明しています。

DVで保護命令が出されたケース

妻(30代後半)は夫(40代前半)からの暴力と子どもへの虐待がひどく、家を逃げ出しました。地域の「配偶者暴力相談支援センター」に相談に行き、保護命令を申立てて発令されています。

しかし、このままでは離婚できず、母子家庭に支給される支援や児童扶養手当などを受けることができません。
そこで、弁護士に相談して、まず離婚調停を申立てますが、夫は自分の暴力行為を否定し、離婚にも応じようとはしませんでした。

やむなく裁判を起こしたところ、保護命令が発令されていることから夫のDVがひどいことが認められ、離婚が成立しました。子どもの親権は妻が獲得し、夫には養育費の支払いが命じられています。

保護命令の内容や対象となるDV行為、手続き方法などはこちらの記事を参照ください。

健康なのに働こうとしないことで離婚になった判例

働けない理由が病気やケガである場合は本人の意思とは関係なく体調が悪いので、離婚請求は認められない可能性があります。

なお、「強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと」は法定離婚事由として認められています。例えば、うつ病の場合は「回復する見込みがない状態かどうか」で判断が分かれます。

それ以外の病気やケガで体調が悪い場合は、夫婦は助け合う義務があるのでそれを理由に離婚を切り出しても認められないでしょう。

ただ、健康なのに働かない、仕事を探そうとしない場合は認められる可能性があります。

その場合は働かないだけでなく、暴力、暴言などそれ以外の原因があると離婚が認められやすいです。

職探しをせずに無職で家事手伝いもしない夫との離婚

夫(30代後半)はどの職に就いても長続きせず、転職活動をしても年齢的なこと、また転職回数が多いことなどを理由に採用されませんでした。

次第に職探しがイヤになったのか、家でブラブラするようになります。家事や子育てを手伝うこともせず、パートで働く妻(30代前半)は「このままでは生活できない」と離婚を決意しました。

しかし何ヶ所かの弁護士事務所で無料相談をしたところ、「働かない」という理由だけで離婚するのは難しいと言われてしまいました。

最後に相談に行った弁護士事務所では「夫が働いていないので慰謝料請求は難しいが、健康なので今後働いて養育費を支払うことは可能と考えられます。離婚調停を申立ててみましょう」とアドバイスされました。

調停には弁護士が妻と一緒に出席、離婚の意思が強いことを伝え、夫は慰謝料の支払いはなし、仕事が見つかり次第養育費を支払うという条件で離婚が成立しました。

家事を一切しない妻との離婚

会社員の夫(30代前半)の妻(30代前半)は結婚してから5年間、ほとんど家事をやっていません。健康面では特に問題はありません。子どもが小さいため専業主婦ですが、子育ての合間や子どもが寝てからでもできることすらやらないため、夫が帰宅後にすべての家事をやるという生活が続いていました。

「子どもが幼稚園に入園したら時間ができるのでやってくれるだろう」と夫は期待していましたが、ママ友との食事会などには出かけるのに相変わらず家事はやらず、幼稚園の持ち物の準備などもできていません。

その様子を見かねた夫は弁護士事務所に相談に行きました。離婚したいが、妻が親権を持った場合に子育てをきちんとできるのかという心配もあったようです。

妻は子どもとは離れたくないという気持ちが強いこと、また、離婚したら実家に帰りたいと話していることから、弁護士のアドバイスで妻に「離婚の解決金」として200万円を渡し、養育費はきちんと支払うという条件で協議離婚が成立しました。

ギャンブルや浪費が原因で離婚になった判例

ギャンブル癖があるだけでは離婚は認められないことが多いのですが、生活費をすべてギャンブルにつぎ込むなどで結婚生活に支障がある場合は離婚が認められることがあります。

実際の事例をご紹介します。

給料をギャンブルにつぎ込んで生活費を入れない夫との離婚

夫(40代前半)、妻(30代後半)、小学生の子どもが1人という家族のケースです。

夫はサラリーマンで仕事には行くものの、休日になると朝からパチンコ店に入り浸りで、妻に渡す生活費はほとんどなく、妻のパート収入で食べている状態です。夫のパチンコや生活費をめぐって常にケンカになり、怒った夫は妻や子どもに暴力をふるうこともありました。

子どもの学費のために貯めていた貯金にまで夫が手をつけたため、妻は離婚を考えるようになり弁護士に相談しました。

妻が何度ギャンブルをやめるように頼んでも聞いてくれなかったこと、夫婦ケンカや夫の暴力が絶えないことから、妻の離婚に対する決意は強く、夫婦関係の修復は困難でした。

まず調停を申立てましたが、ギャンブルに使いこんだお金の返済を夫が拒否したことで不成立となり、裁判になりました。

裁判ではギャンブルだけでは離婚の原因とは認められないが、夫の暴力があること、夫婦関係が破たんしていることなどから離婚が認められました。

慰謝料の請求はしないものの、使い込んだ子どもの貯金を返済すること、養育費を支払うという条件に合意して離婚が成立しました。

なお、「浪費」というケースでは、妻がホスト通いに夢中になり、借金をしたり、生活費を使い込んだりしたことで離婚になることがあります。こちらの記事で詳しくご説明しています。

多額な借金で離婚になった判例

配偶者に内緒で借金をしていたという夫婦は多く、ある日、相手に借金があることを知ってショックを受けて離婚を考えるようになるという相談は弁護士事務所にもよく寄せられています。

この場合、夫婦が協議や調停で合意すれば離婚は成立します。しかし、裁判になると「借金がある」というだけでは離婚は認められないケースが多いのが現実です。

そんな中でも弁護士に依頼することで、借金以外の問題があることを提示して離婚が成立した事例があります。

複数の借り入れと闇金からの借金で生活できず離婚

夫(40代前半)は若いころからの借金があり、返済のために別のところから借りるという自転車操業を繰り返していました。

返済しても元金が減るどころかどんどん増えていき、闇金にも手を出していました。闇金からの電話が自宅にかかってきたことで妻が借金を知り、驚いて夫を問いただしたところ、総額は800万円近くにもなることが発覚しました。

収入のほとんどを返済に充てても追いつかないほどで、これでは生活できないと判断し、離婚を考えるようになりました。

弁護士は「借金があるという理由だけで離婚裁判を勝つのは難しい」と判断し、妻から家庭内のことを詳しく聞き出しました。

すると、夫は収入を借金の返済に充てていたが妻には「収入が減った」とウソをついていたこと、妻は生活費を稼ぐために昼間のパート以外に夜間のバイトにも行き体調を崩していたことなどがわかり、裁判ではそれらの事情を説明して離婚が認められました。

借金だけでは離婚が難しい理由

借金があるというだけでは離婚が難しい理由としては、「債務整理や過払い金請求などで返済額を減らせる」「自己破産する」などの対策が取れるからです。

夫婦間の問題が借金だけならこういった方法で解決が図れます。ただ、配偶者の借金で夫婦の信頼関係が壊れた、相手への愛情がなくなり憎しみすら感じるといった場合は離婚が考えられます。

ただ、その場合でも裁判では難しいので、協議離婚や調停で離婚を成立させるか、または裁判では借金以外の問題があることを示すことになります。

そういった交渉は素人では難しいので、弁護士に相談するのがおすすめです。

限度を超える宗教活動で離婚になった判例

基本的に「信教の自由」があるので宗教活動自体を責めたり、やめさせたりすることはできません。

ただ、次のようなケースでは離婚が認められる場合があります。

  • 宗教活動に熱心になるあまり、子育てをしない……育児放棄
  • 寄付やお布施などのために多額の借金をする
  • 宗教活動に収入を使い、生活費を入れない……悪意の遺棄
  • 家事をしない……夫婦関係の破たん
  • 夫婦の考え方が合わない……夫婦関係の破たん

そもそも宗教活動にのめり込むときはすでに気持ちが宗教活動に向いているため、配偶者が離婚を切り出しても素直に応じる可能性が高いと言えます。つまり、協議離婚が成立することが多いのが現実です。

話し合いがもつれる場合は調停や裁判を起こすことになります。

性の不一致、セックスレスで離婚になった判例

性の不一致やセックスレスは夫婦にだけしかわからないことで、それを理由に離婚を申立てるのは難しいものですが、内容によっては離婚請求が可能です。

夫の異常な性癖が原因で離婚

夫(30代前半)は妻(20代後半)との性行為のときにSMプレイを要求したり、1日に何度も求めたりしました。

独身時代には気づかなかった夫の性癖に困り果てた妻は、性行為だけでなく一緒に生活することすら嫌悪感を持つようになりました。ただ、このことだけで離婚ができるのかどうか不安で弁護士に相談したところ、夫が強要する音声を録音するなどの方法で証拠を押さえて離婚が成立しました。

性の不一致での離婚に関しては、こちらの記事でも詳しい事例や慰謝料請求についてご説明しているので、参考にしてみてください。

犯罪行為で離婚になった判例

配偶者が罪を犯したら離婚しなければいけないということはありません。映画にもあるように、夫が刑期を終えるまで待っている妻もいます。

また、注意すべきなのは「刑が確定しているかどうか」という点です。勾留や逮捕された段階ではまだ刑は確定していません。無実や冤罪の可能性があるため、離婚を切り出しても認められない可能性が大きいと言えます。

ただ、この場合も逮捕されたということで夫婦が話し合って離婚に合意すれば協議離婚が成立します。

犯罪を理由に離婚裁判が認められるケース

もし離婚調停を申立てても、犯罪を犯した方は出席できません。本人が出席しない場合は離婚調停は成立しないため、離婚裁判を起こすことになります。

裁判に本人(犯罪を犯した方)が出廷しないと離婚は成立しますが、保釈や執行停止が認められて出廷すれば争うことになります。

裁判になると、離婚が妥当と認められるだけの理由が必要です。この場合は犯罪の種類によって対応が変わると考えられます。

犯罪の種類による離婚裁判の行方

ひと口に犯罪と言っても、次のようにさまざまなケースがあり、離婚に対する判例も異なります。

犯罪の種類 離婚の判断
婦女暴行(レイプ) 不貞行為とみなされ、法定離婚事由に該当する
盗撮や痴漢行為 軽犯罪なので離婚は認められないことが多い
妻への暴力 傷害罪で逮捕された場合や暴力の証拠があれば離婚は認められる
重大犯罪
(殺人・殺人未遂
強盗など)
離婚が認められる

ただ、上でも書いたように、たとえ殺人事件を起こしても離婚せずに刑が終えるのを待つ夫婦もいます。この表は、あくまでも「離婚を請求して認められるかどうか」という側面でお示ししています。

犯罪が原因での離婚で慰謝料はどうなる?

配偶者の犯罪が原因で離婚になった場合、慰謝料が獲得できるかどうかはそれぞれのケースによって異なります。

特に犯罪の種類によっては被害者に損害賠償を支払うこともあるため、配偶者への慰謝料まで払えないこともあります。

そんなときは弁護士に相談してみましょう。

罪を犯した配偶者と離婚すべきかどうか

配偶者の犯罪を知ったときはショックを受けるでしょうが、そもそも罪を犯した配偶者と離婚すべきかどうかをよく考えることも重要です。

例えば犯罪が大きく報道され子どもがいじめられる、自分も肩身の狭い思いをする、職場にいづらくなったなどデメリットが大きい場合は離婚も仕方がないと言えるでしょう。

一方、職場の業務上など本人の意思ではどうにもできない事情で犯罪に加担してしまうケースもあります。

あまり良いことではありませんが、上司の命令でライバル企業の会議を盗聴した、わいろを受け取らざるを得なかったなど本意ではないケースもあるので、まずは夫婦で話し合ってみましょう。

婚姻を継続し難い重大な理由の判断に迷ったら弁護士に相談を

このように、婚姻を継続し難い重大な理由の判断は個々のケースによって異なります。同じ借金や宗教活動などの問題でも、夫婦や家族の状況によって判断や進め方が異なるものです。

ただ、どのような理由であれ相手に対する信頼と愛情を失わせ、婚姻関係を深刻に破たんさせて回復の見込みがない場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」と判断されるでしょう。

離婚を進めたい場合は弁護士に相談して、有利に持っていくのが得策です。

婚姻を継続し難い重大な事由とはまとめ

DVや性の不一致、多額の借金や浪費などが原因で夫婦関係が破たんしている場合は離婚が認められます。

ただ、裁判になったときはそれを証明する必要がありますし、状況によっては慰謝料請求ができないことがあります。

悩んだときは早めに弁護士に相談しましょう。

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