面会交流を拒絶された場合は慰謝料請求が可能!相場や請求方法を解説
離婚で親権を失い子どもとも別れることになった場合でも、親子の関係が切れるわけではありません。親権を持たない方には「面会交流権」があり、会うことは認められています。
そのため、親権を持つ親が面会を拒否することは「違法行為」となり、慰謝料請求の対象になる場合があります。
今回は子どもとの面会を拒否された場合の慰謝料請求方法や相場についてご紹介します。
面会交流を拒否!慰謝料請求が可能なケースとは?
どのような場合でも慰謝料請求ができるわけではありません。面会交流を拒否されたときに慰謝料請求できるのは、次のようなケースです。
- 面会交流の約束をしているのに拒絶された場合
- 相手が面会交流を拒否する正当な理由がない場合
このように「面会できる正当な理由があるのに面会できない場合」で、さらに面会できないことで精神的苦痛を受けた場合に慰謝料という形で「賠償金」を請求できるのです。
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面会交流の約束をしているのに拒絶された場合
離婚時に裁判で面会について取り決めた場合はもちろんですが、双方の話し合いで面会交流を約束していたのに拒絶された場合も慰謝料請求の対象になります。
相手が面会交流を拒否する正当な理由がない場合
相手が面会交流を拒否する正当な理由がない場合も慰謝料請求が可能です。
面会交流を拒否する正当な理由とは
例えば、次のようなケースでは相手が面会交流を拒否する正当な理由になると考えられます。
- 婚姻中に子どもに虐待したことがある
- 過去の面会交流で子どもに暴言・暴力を振るったことがある
- 乳幼児の子どもと面会する際に、十分に世話ができないのに子どもだけ預けろと言っている
- 子どもを連れ去る可能性がある
- 子どもに犯罪行為(万引きなど)や違法行為をさせるおそれがある
- 無理な条件を出す
婚姻中や過去の面会交流で子どもへの虐待や暴言・暴力を振るったことがある場合は、次の面会交流でも同じ行為を繰り返すおそれがあるため、面会交流は拒否できます。
また、面会交流させると子どもに違法行為、犯罪行為をさせるおそれがある場合も拒否できます。
「無理な要求を出す」とは遠方であるにも関わらず「毎週会いに来い」「交通費はそちらが負担しろ」などの条件を出すことを指します。
このような場合は面会交流を拒否する正当な理由として認められています。
面会交流を拒否できないケース
一方、次のような場合は面会交流を拒否できません。
- 子どもが「会いたくない」「会わなくていい」と言っている
- 離婚後の生活が落ち着いているので会って波風を立てたくない
- 養育費の支払いが滞っている
- 離婚後、長期間が経過して急に会いたいと言い出したが困る
- 再婚したので、今さら昔の親に会わせたくない
- 面会交流の際に(自分が)相手と顔を合わせるのがイヤ
子どもが「会いたくない」と言うのは拒否の理由にはならない
たとえ子どもが会いたくないと言っても、親には面会交流する権利があります。また、子どもは口では会いたくないと言っていても、実際に会うと喜ぶ場合があります。
そのため、「子どもが会いたくないと言っている」という理由だけで面会交流を拒否することはできません。
自分が別れた配偶者と会いたくないというのは拒否の理由にはならない
離婚後の生活が落ち着いてきたので、今さら昔の相手(子どもにとって親)と会わせたくないという理由や、面会に子どもを連れて行くことで自分が別れた配偶者と会うのがイヤというのも面会交流拒否の理由としては認められません。
面会交流を拒絶された場合の慰謝料の相場
これらのことを踏まえて、面会交流を拒否される正当な理由がないのに拒絶された場合に請求できる慰謝料の相場を見ていきましょう。
相場は30万円前後
過去の判例では面会交流を拒否されたことに対する慰謝料の相場は20万円~30万円でそれほど高くはありません。
実際の判例1
親権は母親が持ち調停で面会交流する約束をしたにも関わらず母親が面会交流を拒否した事例に対して、地裁は20万円の慰謝料支払いを命じました。
しかし、その後、妻が一定の提案を行うなど協議が継続しているため、慰謝料請求は高裁で棄却されています。
(平成27年3月 熊本地裁の例)
実際の判例2
子どもとの面会を母親が拒否。さらに母親の再婚相手が連絡役になることを調停で合意していたが、面会が行われなかったことに対して母親には70万円、連絡役の再婚相手には30万円の慰謝料請求が認められました。
(平成28年12月 熊本地裁の例)
面会交流拒絶の慰謝料が高額になるケース
なお、次のようなケースでは慰謝料が高くなります。
- 面会の約束をしているのに長期間会わせてもらえない
- 離婚後、一度も会っていない
- 「会わせてほしい」と申し出ているのに相手が話し合いに応じない
- 面会交流を拒否する理由が相手の身勝手な場合
特に相手が「再婚したのでもう昔の配偶者には会わせたくない」「相手とは(自分が)顔を合わせたくない」などの身勝手な理由で面会交流を拒否したり、「会わせてほしい」と申し出ているのに無視し続けたりした場合は慰謝料が相場以上に高額になる傾向にあります。
ただし多くても100万円までが相場だと言われています。
面会交流拒否に対する慰謝料請求の方法
面会交流拒否に対する慰謝料の額は数10万円なので、なるべく費用の安い弁護士に相談するのがポイントです。
まず慰謝料請求の流れと必要な証拠を揃える
慰謝料を請求するには地方裁判所に「慰謝料請求訴訟」を起こす必要があります。
また、その際には下記のように面会交流ができなかった証拠を提出しなければなりません。
- 「月1回は面会交流する」などの取り決めをした書類
- 相手との電話のやりとり(面会拒否の理由などを話している録音データなど)
- 相手と面会交流の交渉をしたメモなど
面会交流を拒否される正当な理由がないか再確認する
なお、相手が面会交流を拒否している背景には、もしかするとあなたと会わせられない正当な理由があるのかも知れません。
婚姻中や過去の面会で子どもに暴力・暴言をしたことはないか、普段のあなたの言動から子どもと会わせるとそのまま連れ去る可能性があると思われたのではないか……などを考えてみましょう。
もし思い当たる節があれば、その態度を改めることが大切です。そういった理由がないのに面会交流を拒否される場合は慰謝料請求に踏み切ります。
もう一度、面会交流ができないか試してみる
あなたの本来の目的は慰謝料を受け取ることではなく、子どもに会いたいということではないでしょうか。
一度慰謝料を請求するといよいよをもって後戻りができなくなりますし、元妻(夫)の言葉により子どもの貴方への心象も悪化しますので、慰謝料請求する前に、面会交流を実現できるように対策を取ってみるのもいい方法です。
なお、面会交流を実現するには、次のような方法があります。
- 家庭裁判所に面会交流調停を申し立てる
- (1)で相手が応じない場合は面会交流審判で家庭裁判所の調査官が面会方法を決定する
- (1)や(2)でも応じない場合は家庭裁判所に申し立てて「履行勧告」をしてもらう
- (3)にも従わない場合は「間接強制」を行う
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間接強制とは?
間接強制とは「子どもに会わせないならば〇〇万円を支払え」と相手に金銭を要求して、面会交流に応じさせる方法です。
ただ、その金銭は慰謝料とは異なるので注意が必要です。
間接強制の例
間接強制を行った結果、母親が子どもとの面会交流ができた事例をご紹介します。
親権は父親が持ち、別れた妻(子どもにとっては母親)との月1回の面会を家庭裁判所が認めましたが、父親は面会を拒否し続けました。
そこで母親が間接強制の申し立てを行いました。家庭裁判所では父親に対して面会を1回拒否するごとに100万円支払うことを命じます。その後、1回100万円は高額過ぎるという理由で30万円に減額されました。
なお、間接強制の申し立て後に母親は数年ぶりに我が子との面会が実現しました。
間接強制の金額は「このぐらいの額なら相手は面会させるだろう」という効果が期待できる金額が設定されます。そのため、実際の請求額はケースバイケースで異なります。
また、この事例でもわかるように間接強制は相手が面会交流の義務を果たさないことに対して行う強制執行のひとつです。
一方、慰謝料は面会交流ができないことで精神的苦痛を受けたことに対する賠償金なので、面接強制と意味合いが異なるということを理解しておきましょう。
それでもダメなら弁護士を通して慰謝料請求をする
再度の面会交流の要請や、間接強制をしても相手の態度が変化しない場合は弁護士に依頼して慰謝料請求をしましょう。
面会交流を拒絶するような相手なので、残念ながら弁護士なしで大切な子ども会うのはほぼ不可能でしょう。
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面会交流拒絶の慰謝料まとめ
正当な理由がないのに面会交流を拒否されたら慰謝料請求が可能ですが、請求できる額は20万円~30万円が相場と言われています。
相手とのやり取りや慰謝料の金額などは専門の弁護士に相談しながら進めるといいでしょう。
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