会社経営者(社長)との離婚と財産分与で知るべき知識とリスク
会社経営者と離婚をする場合、特殊な財産分与を筆頭に普通の夫婦の離婚では発生しない様々な要素やリスクが存在しています。
これを知っておかなければ離婚をする時に損をする事に繋がってしまいますので、会社経営者(社長)との離婚を検討している方はぜひ参考にして下さい。
会社経営者(社長)との離婚では財産分与が通常と異なる
離婚相手が会社経営者の場合、財産分与の対象が増える
サラリーマン家庭の離婚の場合、財産分与の対象になるのは預貯金や夫婦で購入した不動産、自動車、有価証券や保険が財産分与の主な対象です。
会社経営者の場合だと、個人名義であっても結婚後に購入したゴルフ等の会員権や自社、他社に関わらず株式、時計やアクセサリーなど高額な貴金属というように対象となるものが増えます。
経営している会社の規模や利益によって年収は異なりますが、会社経営者の場合は一般家庭よりも高額な持ち物が多く、例えばネックレス1つ取っても、数十万から数百万円する物を持っていることがあります。
数十万円以上の品は財産となるので財産分与の対象
数万円のものであれば財産分与をするほどではないので対象になりませんが、数十万円以上のものは財産として認められるため、財産分与の対象になります。
ですので、会社経営者との離婚で財産分与を請求する場合は、一般的な対象物だけではなく購入金額を基準に対象物を決めましょう。
会社名義の財産は財産分与に入る?
会社を経営している場合、車や土地など資産となるものは会社名義になっていることも多いでしょう。
小中規模の会社であれば、会社名義の車を私用車として使うこともあるので、財産分与の対象になるイメージがありますが、どんなものであっても、どんな使い方をしていても会社名義の資産は財産分与の対象にはなりません。
会社の資産と会社経営者の資産はあくまでも別物です。
離婚による財産分与の対象は会社経営者とその配偶者の共有財産ですから、極端に言ってしまうと預貯金でも不動産でも株式でも会社(法人)名義であれば財産分与はできません。
ただし、家族経営だったり従業員数が少なかったりする零細企業の場合だと、会社名義であっても例外的に個人資産と認められることがあります。
どういったものが例外となるかに関しては定義がないため、事前に弁護士に相談しておくと、取りこぼすことなく請求ができるでしょう。
財産分与の割合は相手が経営者でも変化なし
財産分与の割合は、原則として2分の1とされています。
会社経営者側からすると、自分が築き上げた財産であり、仮に配偶者が専業主婦(主夫)だった場合は財産を半分渡すのはおかしいという主張になるかもしれません。
しかし、今は専業主婦(主夫)であっても家事や育児を労働として認められるケースが多く、例えば自動車事故で通院となった時は専業主婦という仕事の労働対価として休業手当が保険会社から支給されます。
また、会社経営に集中できたのは配偶者がしっかりと家を守っていたからという主張もできるので、割合のことも揉めるようでしたら弁護士に介入してもらいましょう。
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経営者(社長)との離婚における財産分与のリスク
稀に財産分与は折半にならない事もある
原則的には2分の1となっている財産分与の割合ですが、経営している会社の業種や環境によっては折半になるとは限りません。
例えば会社の原資が特有財産だったり、会社経営者がほとんどを運用していたり、特殊な業種で配偶者が財産の維持にまったく関わっていないという場合は、財産分与の割合を減らされてしまう可能性があるのです。
また、離婚前に夫婦仲が悪くなると、離婚を想定して財産を会社名義にされてしまうことがあります。
会社名義のものは財産分与の対象にならないので、本来なら分与されるものが減ると言う点で言えば折半ではなくなってしまいます。
財産分与を逃れるための名義変更を立証するのは難しいですが、刑法上での罰はないとしても民法上では詐欺として損害賠償請求ができるかもしれません。
いずれにしても、相手の主張や状況によって財産分与の割合が変わることは少なくないので、リスクを避けるためにも弁護士と一緒に手続きを進めるのが正解です。
財産分与には時効がある
財産分与の請求は、離婚してから2年間という期限が設けられています。
一般的には、この期限のことを財産分与請求権の時効と言いますが、財産分与の時効というのは犯罪などで適用される消滅時効ではなく、除斥期間となります。
消滅時効であれば、所定の手続きを行うことで時効をリセットしたり延長をしたりすることができます。
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しかし、除斥期間は消滅時効のように何らかの手続きをすれば請求期限を延ばせるというものではなく、延長も期間のリセットもできません。離婚して2年経ったら、何があっても請求をする権利は失われてしまいます。
例えば共有財産の把握に時間がかかりすぎた結果、期限が過ぎてしまうと請求できないので注意しましょう。
経営者(社長)との離婚で財産分与を請求する前にするべきこと
相手名義の資産をできる限り把握しておく
財産を個々で管理していたり、会社経営者だけが管理していたりすると、すべての財産を把握するのは難しくなります。
不動産などは比較的調べやすいですが、預貯金や保険などは個人では調べづらいですし、弁護士照会制度を使って裁判所で手続きをしても、相手側の同意がなければすべてを調べ上げることはできません。
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財産の開示に関しては弁護士にも裁判所にも強制する権利はありませんから、調べてもらえば大丈夫と油断しないようにしましょう。
何も把握しないまま財産分与請求をすると、自分が知っている財産しか分与対象にならないかもしれないので、事前にできる限り把握しておくことが重要です。
財産隠しを防ぐため安易に離婚を切り出さない
離婚を切り出されると、その時点で財産分与の請求に備え、個人名義のものを会社名義にしたり、預貯金を隠したりする人もいます。
財産分与を少なくするためにごまかしたり隠したりするのは民法上では詐欺罪にあたるとしても刑法上では罪になりませんし、実際に財産隠しをされてしまうと、それに気がつくというのはほぼ不可能です。
はっきり離婚の話しをしていなくても夫婦間が険悪になったり、慰謝料や財産分与に関する話しをしたりすると感づかれて財産を隠されるかもしれません。
ですので、安易に離婚を切り出さないのはもちろん、相手に隙を与えられるようにお金に関する話しも控えた方がよいでしょう。
財産隠しをされた場合に備えて先手を打っておく
財産隠しを本人の力で暴き出すのはかなり大変ですし、すべての財産を把握するのは難しいのが実情です。
しかし、実際のところ財産隠しをする方は多く、想像よりも分与額が減ってしまうという方は少なくありません。そうならないように、財産分与を請求するときは最初から弁護士に介入してもらいましょう。
弁護士の弁護士照会には強制力はありませんが、離婚調停となった場合は、調査嘱託を申し出れば官庁や団体などには情報の強制開示を求められるので、不動産の財産や会社の利益により収入がどれぐらいなのかなどを推察することで財産の追求ができます。
また、最初から弁護士に介入してもらえばある程度までは正確に財産を追うことができますし、財産評価の主張も適正にできます。
揉めてから弁護士に入ってもらうより、請求する段階から弁護士を通した方が相手側も嘘をついたら不利になるかもしれない、と感じてすんなり財産を開示してくれるケースも多いので、先手を打って弁護士に相談してから請求を行いましょう。
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補足:自分も経営に関与していた場合はどうなる?
離婚は解雇の理由にはならない
会社の経営に監査役や取締役、経理などで自分も関与している場合、辞めなくてはいけないと思う方もいるかもしれませんが、離婚は解雇理由にはなりません。
もし離婚をするのであれば役職や従業員雇用契約を解除する、と言われた場合は不当解雇になりますから財産分与とは別に訴えることができます。
ですが、もし離婚をしたら辞めるというつもりだったのであれば、退任することを条件に慰謝料や財産分与を引き上げてもらうと言う手があります。
もちろん退任と引き換えに取り分を多くするというのは駆け引きが必要ですし、違法行為に当たることをしないよう注意が必要なので、必ず弁護士に交渉を依頼しましょう。
仕事を辞めるのであれば退職金をもらうこと
会社経営に携わっていた場合、社員として働いていた場合、離婚を機に退職するのであれば退職金ももらいましょう。
離婚の手続きや財産分与、慰謝料の請求、引っ越しなどで忙しいので、退職をするときには福利厚生のことをおざなりにしてしまい、退職金をもらわずに辞めてしまうという方も多いようです。
退職金は雇用された人間が受け取れる権利ですから、もし退職金が支払われなかった場合は併せて請求しましょう。
経営者(社長)との離婚で財産分与以外に話し合うべきこと
離婚理由による慰謝料の請求
もし、離婚理由が不貞行為だったりDVだったりする場合は、こちらから離婚を言い出したとしても慰謝料を請求できます。
慰謝料は財産分与とは別のものになるので、離婚原因が相手側にある場合はしっかり請求しましょう。
と言っても、こちら側の言い分だけで慰謝料がもらえるということではなく、相手のせいで婚姻関係が破綻したことをきちんと証明する必要があります。
不貞行為でもDVでも離婚の原因となった事項の証拠が揃っていないと、調停や裁判で訴えても却下されてしまうので事前に証拠をきちんと準備を整えてから請求しましょう。
子供がいる場合は養育費を請求できる
子供がいる場合、当然ですが財産分与だけではなく養育費や婚姻費用を請求できます。
このとき注意したいのが、2000万円以上の年収がある経営者には2つの計算法があるということです。
1つは上限2000万円の範囲で養育費や婚姻費用を算出するというもの、もう1つは2000万円以上の年収があれば養育費も婚姻費用も増加するという算出法です。
どちらの計算法にするかは協議や調停、裁判によって決まりますが、いずれにしても自分に優位となる計算法じゃないと損をしてしまいます。
相手側からは、もちろんできるだけ支払い費用を抑えられる計算法を提示してきますが、会社経営者の場合は単純に養育費・婚姻費用算定票で算出することはできません。
こういった計算法に詳しくない、もしくは分からないのであれば、相手の言いなりになるのではなく弁護士にどういった計算法が良いかアドバイスをもらうことが、損するリスクを回避するポイントです。
収入の多い会社経営者(社長)と離婚するときは弁護士に相談
配偶者が会社経営者(社長)だった場合、一般的なサラリーマンとは分与する財産の金額が大きくなりますし、法律上知識がないとどういった請求をすればいいか分からないことも多いので、自分だけで請求手続きを進めてしまうのは禁物です。
請求自体は難しくありませんが、手続きの方法によっては財産などを隠されて本来もらえる金額より大幅に少ない、減額されてしまうということもあります。
慰謝料をもらえるとしても離婚後の生活を安定させるには少しでも多くの財産分与もらっておいた方が安心です。
ですので、会社経営者(社長)との離婚や財産分与では、リスクを負わないように必ず弁護士に相談して進めてください。
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