別居後の離婚までの平均期間は1年!メリットや注意点も解説
夫婦が離婚を決断する前に、お互いに離れて暮らす「冷却期間」を設けることがあります。毎日顔を合わせるとケンカばかりだけれど、少し距離を置くことでお互いの存在感や良さを感じることがあるからです。
しかし、別居期間を置いても離婚に至るケースがあります。このページではそんな別居から離婚までの平均期間や、別居後の離婚のメリットと注意点についてご説明します。
別居後から離婚までの平均期間を、厚生労働省のデータから算出
別居1年未満での離婚が8割を占めている
厚生労働省が平成20年に実施した調査によると、別居から離婚するまでの期間の割合は次のようになっています。
別居期間が1年未満で離婚するケースが全体の82%を占めていて、5年以内を含めると全体の95%が別居後に離婚していることがわかります。
つまり、別居を始めると離婚に進むケースが多いということになります。
- 1年未満……82.5%
- 1年~5年……12.8%
- 5年~10年……2.7%
- 10年以上……1.9%
参照:厚生労働省 同居をやめたときから届出までの期間(別居期間)別構成割合
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon10/02.html
第12-1表 離婚の種類・親権を行わなければならない子の有無・同居をやめたときの世帯の主な仕事・夫妻の国籍及び同居期間別にみた別居期間別離婚件数 -平成20年-
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon10/03.html
補足;別居には単身赴任や病気療養は含まない
なお、「別居」とは漢字を見ると住まいを別にすることですが、単身赴任や病気療養のために夫婦のどちらかが別の住まいで暮らすことは別居とは言いません。
別居はどちらかが配偶者と一緒に暮らす意思がなく、荷物を持って出て行き、帰って来ない状態を言います。ただ、明確な定義があるわけではないので、それぞれの状況で判断は異なります。
別居期間が長くなると裁判離婚になるケースが多い
同じ調査で別居期間と協議離婚と裁判離婚の割合を見てみると、次のようになっています。
別居期間が1年未満の場合は協議離婚の割合が多いですが、1年以上になると裁判離婚の割合が多くなります。
このデータから、別居期間が長くなればなるほど話し合いでの離婚は難しいということがわかります。
別居期間 | 協議離婚 | 裁判離婚 |
---|---|---|
1年未満 | 85.1% | 64.4% |
1年~5年 | 10.6% | 28.9% |
5年~10年 | 2.5% | 4.2% |
10年以上 | 1.8% | 2.4% |
法的な離婚に必要な別居期間は5年~10年
データでは上記のような結果が出ていますが、別居から離婚に至る経緯は夫婦それぞれです。
ただ別居期間が長くなると、第三者が見ても「夫婦関係は破たんしている」と判断できます。
そして夫婦関係が破綻していると判断されると、両者の合意がなくても離婚することが可能ですので、離婚までの別居期間は弁護士事務所が受けた相談事例などを考えても平均5年~10年という結果が多くなっています。
これは5年~10年も別居していれば、もう元の夫婦関係に戻ることは難しいと判断できるからです。
もちろん離婚の理由は別居だけではありません。配偶者の不貞行為や暴力、モラハラ、異常な性癖などがあれば離婚請求ができます。
こういった離婚事由に該当する事柄があると5年未満であっても離婚できるので、むやみに別居期間を長引かせることなく結論を出すといいでしょう。
離婚前に別居するメリット
「離婚する前にわざわざ別居する必要があるのか」と思う人がいるかも知れませんが、実はメリットがあります。
詳しくご説明していきましょう。
夫婦関係の破たんが認められやすい
裁判で離婚が認められる「法定離婚事由」には、配偶者の不貞行為(不倫)やDV(暴力、モラハラ)などもありますが、「夫婦関係の破たん」もあります。
夫婦関係の破たんとみなされる状態にはいくつかありますが、夫婦が長期間別居していることも破たんしていると考えられます。
協議離婚や調停離婚は離婚原因を問われませんが、離婚裁判を起こす場合は法定離婚事由に該当する必要があります。そのときに「別居していて夫婦関係が破たんしていた」という事実を作っておくと、裁判が起こせるということになります。
ただし、単身赴任や仕事での出張などで離れて暮らすことは、夫婦関係の破たんとしては認められません。ご注意ください。
有責配偶者からの離婚が認められるケースがある
有責配偶者とは離婚原因を作った人のことで、不貞行為(不倫)やDV(暴力やモラハラ)、悪意の遺棄(いき)などを指します。一般的に有責配偶者からの離婚請求は認められませんが、別居期間が長い場合はすでに夫婦関係が破たんしていると判断されることがあります。
ただ、過去の判例では2~3年の別居では有責配偶者からの離婚は認められていません。10年以上という長期にわたる別居で、しかも未成熟子がいないなど他の条件がそろったときに限られます。
有責配偶者に関してはこちらの記事で詳しくご説明しているので、ご覧ください。
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離婚の本気度を相手に示すことができる
夫婦ケンカをして、どちらかが家を出て一時期実家に帰る……ということはよくあることです。その場合、「相手が謝ったら家に戻ろう」ということが多いものです。
「ちょっと懲(こ)らしめるために短期間の別居をする」ということですが、別居が長期間になると相手は「これはもしかして本当に離婚を考えているのかも?」と不安になってきます。
相手が謝ってきても折れずに別居を続けることで、自分の「別れたい意思」を相手に伝えることができます。
別居することで不貞行為を隠すことができる
不貞行為(不倫)は法定離婚事由に該当し、相手から離婚請求されたら離婚が認められるだけでなく高額な慰謝料請求されることもあります。
しかし、不貞行為がバレていない間に別居して配偶者が不貞行為に気づかなければ、そのまま「夫婦関係が破たんしている」という理由で離婚することができます。
つまり、自分の有責性(離婚の責任がある)を隠すことができるのです。
ただ、その場合でも配偶者が少しでも怪しいと思い、探偵を使って調査したらバレる可能性があります。決して得策だとは言えないでしょう。
別居後に築いた財産は財産分与の対象外になる
離婚するときには「財産分与」を行いますが、これは夫婦として生活していた期間中に築いた共有財産が対象です。
また、分与の割合は離婚原因のあるなしにかかわらず2分の1ずつとなっています。
ただ、別居生活を始めてから築いた財産(貯金や車の購入など)は夫婦が協力して築いたものではないので財産分与の対象からは外れると判断されます。
つまり、離婚する意思があるのに同居生活を長く続けていると、その期間に貯めた貯金は離婚時に財産分与の対象になってしまうということです。しかし、別居をすると、別居後に貯めた貯金に関しては財産分与の対象ではなくなります。
ただし、現実にはそれぞれのケースで判断が異なります。別居後に築いた財産がすべて財産分与の対象から外れるというわけではありません。また、不動産など評価額が変動するものについては、離婚時の評価額で財産分与を行うという判例があります。
そういった場合は別居期間を長引かせるのはデメリットになることがあります。
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離婚前に別居するときのデメリットと注意点
一方、離婚する前に別居すると、デメリットもあります。その際の注意点も一緒に見ていきましょう。
別居しても夫婦関係の破たんとは判断されないことがある
上でもご説明したように、別居期間が長いとすでに夫婦関係が破たんしているとみなされて、離婚が認められるケースがあります。
ただし、それは10年~20年という相当長い期間の場合です。1年や2年の別居では夫婦関係の破たんが認められるわけではないので注意しましょう。
別居以外の法定離婚事由があり、その証拠を提出すれば離婚請求と離婚成立が可能になります。
別居して家を出ることが悪意の遺棄と判断されることがある
それまで主に収入を得ていた方が家を出て別居生活を始めると、相手は生活費が得られず困ってしまいます。そのため、別居が「悪意の遺棄」とみなされることがあります。
夫婦には「同居」「協力」「扶助」の義務がありますが、別居するということは義務違反をすることになります。(単身赴任や病気療養、相手のDVから逃げるためなどの理由がある場合は義務違反には該当しません)
別居すること自体が同居の義務違反に当たる上に、生活費を入れない、家事をしないなどが「悪意の遺棄」と判断される可能性があるのです。
悪意の遺棄での離婚は慰謝料請求の対象になるので、十分に注意が必要です。収入を多く得ている方が別居して家を出る場合は、次に述べる婚姻費用を支払うことで悪意の遺棄を避けることができます。
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別居期間中の婚姻費用の請求をされる
離婚していない夫婦が別居したら、収入の少ない方はたちまち生活費に困ってしまいます。そこで、配偶者に別居期間中の「婚姻費用」を請求することができます。
婚姻費用はお互いの年収を元に計算され、離婚するまで支払い義務があるので、別居期間が長引くとそれだけ婚姻費用の支払いも増えてしまいます。
なお、婚姻費用に関してはこちらの記事で詳しくご説明しています。ぜひ参考にしてください。
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不貞行為の証拠がつかみにくくなる
不貞行為をしている配偶者が家を出ていくことで、証拠を集めることが難しくなります。
不貞行為をしている可能性があるならば、別居する前に証拠を集めておきましょう。早めに探偵事務所に依頼するのもいい方法です。
別居後の離婚までの期間によくあるQ&A
離婚前の別居でよくあるQ&Aをご紹介します。
Q:夫が家を出ていき、住宅ローンや光熱費の支払いができません
夫との仲はあまり良くなかったものの、子どももいるので離婚は思いとどまっていました。ところがある日、夫が家を出て行ってしまいました。会社には出勤しているようです。
夫は別居後、生活費を入れなくなってしまい、私は住宅ローンや光熱費の支払い請求が来て困っています。
こんなとき、どうすればいいのでしょうか?
A: 婚姻費用の請求をしましょう
離婚する前の夫婦が別居したり、同居でも相手(収入の多い方)が生活費を入れなかったりする場合は「婚姻費用」の請求ができます。
婚姻費用には住宅ローンや光熱費の他に食費や医療費、子どもの学費など生活に必要なすべてが含まれます。
ただ、実際に請求する金額は請求書や領収書を見て計算するのではなく、お互いの年収や子どもの数、年齢などで計算します。
婚姻費用請求は家庭裁判所に申立てることでできます。ご主人は出勤していることがわかっているので、所在不明ではありません。役所で戸籍謄本や住民票などで住所を確認して請求するといいでしょう。
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別居と離婚期間~まとめ
夫婦が離婚する前に別居する理由としては、少し冷却期間を置きたいというものがあります。それでお互いに気持ちを入れ替えて結婚生活を続けるケースもありますが、中には修復困難ということもあります。
厚生労働省のデータでは、別居期間が1年~5年までで離婚するケースが大多数を占めています。つまり、別居は離婚への第一歩だと言えます。
離婚せずに別居している状態では、婚姻費用の問題が発生します。また、別居後に離婚すると財産分与でもめることもあります。
夫婦間で何かしらの問題があるから別居になるので、離婚する、しないに関わらず早めに問題は解決していきましょう。
どうしても修復できない場合は離婚もやむなしですが、そのときは自分が不利にならないように弁護士と相談しながら対策を考えていきましょう。
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