有責配偶者からの離婚請求|親権や時効、判例などを紹介
本来、有責配偶者からの離婚請求は認められませんが、状況によっては離婚が認められるケースがあります。
このページではそんな有責配偶者からの離婚請求が実際に認められた事例や親権、慰謝料請求の時効などについて詳しくご説明しています。
有責配偶者からの離婚請求が認められるとき
本来は有責配偶者からの離婚請求はできませんが、次のケースでは認められることがあります。
- 有責となる出来事(不倫など)が起こる前から夫婦関係が破たんしている
- 未成熟子(経済的に自立していない子)がいない
- 離婚することで相手配偶者が精神的、経済的、社会的に過酷な状態に置かれないとき
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
なお、有責配偶者とはどのような意味なのか等の基礎知識や、どのようなケースが「有責」になるのかという点については、こちらの記事で詳しくご説明しています。
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夫婦関係が破たんしている
「夫が不倫相手と何年も同居生活をしている」場合、夫が有責配偶者になると思いがちです。
しかし、そうなる以前に夫婦関係が破たんしているケースの場合、そのときは夫の有責性は認められず、離婚を請求することができます。
「夫婦関係の破たん」とは以下のような状態を指します。
- 夫婦が何年も別居生活(長期の単身赴任や病気療養は除く)を続けている
- 家庭内別居(寝室を別にし、夫婦間での会話がないなど)状態が続いている
- 夫婦がともに関係修復しようという意思がない
- DVやモラハラ
- 多額の借金がある・浪費癖がある
- 宗教活動に過度にのめり込む
特に「長期にわたる別居」は有責配偶者からの離婚請求を認める大きな要素になります。裁判では2~3年の別居は「長期」とは判断されないことが多いようで、もっと長い期間にわたって別居を続けている場合が該当します。
未成熟子がいない
未成熟子がいないケースも、有責配偶者からの離婚請求が認められる条件の1つになっています。
未成熟子とは
「未成熟子」とは、経済的に自立していない子どものことを言います。
未成年か成人しているかどうかや年齢的なことではなく、子ども自身が働いておらず収入を得ていない場合は「未成熟子」と言います。
未成熟子がいると有責配偶者からの離婚は認められないことがありますが、未成熟子がいない場合は認められる可能性があります。
離婚で相手が精神的、経済的、社会的に過酷な状態に置かれないとき
有責配偶者が離婚を切り出して別れたことによって、相手が経済的な理由や精神的なダメージなどで生活できなくなる場合は離婚が認められません。
ただ、そうでない場合は認められる可能性があります。
例えば有責配偶者が離婚に際して相手に十分な生活費や養育費を渡す、家や車を相手に渡す(財産分与)など、生活に困らないようにすれば離婚の請求が認められる可能性があります。
また、配偶者が働いていて離婚しても十分な生活費を稼げるという場合も、「過酷な状況」とは言えないため離婚が認められるでしょう。
有責配偶者からの離婚請求が認められた判例
裁判では以下の3点が争点となります。
- 相当長期間の別居
- 未成熟子の存在
- 相手配偶者が離婚によって過酷な状況におかれないこと
別居生活40年、財産分与や慰謝料支払いで離婚が成立
これは平成3年に東京高裁で離婚が成立した判例です。
- 夫婦の同居期間は12年、その後別居生活が40年間続く
- 未成熟子はいない
- 別居期間中に生活費が支払われることはなかったが、別居するときに自宅を相手配偶者に渡している。
- また、配偶者からも婚姻費用を請求することはなかった。
- かつ離婚時に財産分与として1000万円、慰謝料として1500万円を支払うことで和解している
このように①~③のすべてを満たしており、離婚するときに財産分与や慰謝料の支払いにも応じていることから離婚が認められました。
別居期間は短いが配偶者に経済力があるため離婚が成立
これは平成14年に東京高裁で認められた判例です。
- 夫婦の同居生活は約21年、別居生活は6年以上
- ただし、同居していたころから夫婦の会話は少なく、意思疎通が不十分であった
- 未成熟子はいない
- 配偶者は働いていて相当の収入がある
- また別居に際して有責配偶者は自宅を渡し、ローンも完済する意思があった
こちらは①の別居期間が6年と短いですが、同居期間中から夫婦の会話がなく関係は破たんしていたと考えられます。
さらに②と③の条件も満たしていることから離婚が認められました。
有責配偶者からの離婚請求が棄却された事例
一方、①~③のいずれかの要件が満たされていない場合は、有責配偶者からの離婚請求が棄却されています。
未成熟子がいて配偶者が働けないケース
平成17年、福岡高裁の事例です。
- 夫婦の同居生活は11年、別居期間は9年以上
- 12歳未満の子どもがいる
- 配偶者はうつ病を患っており、働くことができない。
- 有責配偶者からは別居期間中も婚姻費用が支払われていたが、金額的には十分とは言えず、離婚することで経済的に困窮することが考えられた
このケースでは①の長期間の別居という点は満たしていても、②未成熟子がいる、③離婚することで配偶者と子どもが過酷な状況に置かれるという状況があるため、有責配偶者からの離婚請求は却下されました。
他にも①~③のいずれかの要件を満たしていないケースでは、有責配偶者が離婚請求しても認められない事例が多くあります。
有責配偶者から離婚請求されたときの親権はどうなる?
有責配偶者が離婚を切り出し、あなた自身が離婚に応じる場合、親権はどうなるのでしょうか。
それは、どちらが親権者としてふさわしいかどうかで判断されます。
親権者を決める要素
親権者を決める場合は、次の要素をもとに検討されます。
- 子どもへの愛情
- 経済力
- 引っ越しや転校の有無
- 子どもの年齢
- 親権者の監護能力(子どもの面倒が見られるかどうか)
- 兄弟が分かれないこと
- 子ども本人の意思
特に子どもの年齢が低い場合は母親の存在が必要です。
そのため、親権者を判断する際には「母性優勢の原則」があり、母親が親権を取ることが多くなります。
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ただ、有責配偶者だから親権が得られないというわけではありません。子どもの年齢や生育状況、父・母の経済力や監護能力などによって判断されます。
親権については離婚の協議や調停、裁判で話し合うことになります。
なお、離婚での親権については、こちらの記事で詳しくご説明しています。
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有責配偶者から離婚請求されたときの対処法
有責配偶者から離婚を請求されたら「相手が悪いのに!」と思うので、当然納得なんてできませんよね。
有責配偶者から離婚を請求されたときの適切な対処法は、【A:離婚したくないとき】【B:離婚に応じるとき】のそれぞれのケースで異なります。
A:離婚したくないときの対処法
まずは離婚しない姿勢をみせる
相手はいきなり離婚裁判はできないので、協議または離婚調停を申し出てくるはずです。あなたが離婚したくなければ、その場で「離婚は拒否する」という姿勢を貫くことが大切です。
協議や調停ではあなたが「Yes」と言わない限り、離婚は成立しません。
有責配偶者が離婚裁判を起こした場合の対処法
あなたが離婚に応じず、相手がどうしても離婚したいときは離婚裁判を起こすことになります。
しかし、相手には不貞行為などの有責性があるので、上記の①~③の要件に該当しない限り、裁判では離婚は認められません。
つまり離婚は成立しないということになります。
離婚を拒否することが得策か検討することも重要
有責配偶者は離婚によって自分が不利になることを承知の上で、あなたに離婚を申し出ています。それだけ不倫相手と一緒になりたいという気持ちが強いと考えられます。
そのような状態であなたが相手の離婚申し出を拒否して婚姻関係を続けたとしても、本当に幸せになれるかどうかをよく考えることが重要です。
例えば子どもがいて「母子家庭になるのはかわいそう」という場合、婚姻関係を継続しても相手は子どもに愛情を注がない可能性があります。
過去の判例などをみると家にいない、子どもと遊ばない、子どもに関心を示さない、果てには虐待なども考えられます。
それよりは相手の離婚請求を受け入れた上で正当な慰謝料や養育費を獲得し、さらに公的な支援を受けることで母子が心身ともに安定した、より幸せな生活ができるのではないでしょうか。
なお、離婚の話し合いがまとまるまでに時間がかかりそうなときは、生活費として「婚姻費用分担請求の調停」を申し立てて生活費を確保する方法があります。
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また、離婚になる場合は養育費や慰謝料をしっかり請求しつつ、相手が支払えないときの対策として財産差し押さえなどを取り決めておくことも大切です。
B:有責配偶者からの離婚請求に応じるときの対処法
まず希望する条件をしっかり伝える
有責配偶者から離婚請求があり、自分も相手に愛想を尽かして離婚したいという場合、希望する条件をしっかり提示して対応しましょう。
相手に有責性があるということは、つまり相手の分が悪いので、あなたの希望が通りやすいと考えられます。
提示できる条件として、下記のものがあります。
- 親権
- 養育費
- 面会交流
- 慰謝料
- 財産分与
- 年金分割
ただし、養育費は相手の有責度合いによって金額が高くなるわけではないので注意が必要です。
慰謝料は高めに請求する
慰謝料は有責配偶者=相手が悪いので、懲らしめる意味合いも含めて高めに請求するのがポイントです。
面会交流は拒否しないようにする
また、面会交流は別れた親の権利であり、子どもにとっても権利なので相手に有責性があっても拒否しないようにしましょう。
ただし、相手から暴力を受けていたなどの理由で子どもが嫌がる場合は面会交流が認められないことがあります。
有責配偶者への慰謝料請求は時効に注意!
有責配偶者と離婚をする場合は慰謝料請求ができますが、「離婚したときから3年」「不貞行為を知ったときから3年(または不貞行為が始まったときから20年)」という時効があります。
「慰謝料請求できるのに時効が来てしまった」ということのないように気をつけましょう。
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なお慰謝料の金額や請求方法については、弁護士に6相談してみましょう。
補足:有責配偶者が過剰な慰謝料請求をされた場合の対処法
補足として、有責配偶者が過剰な慰謝料請求された場合の対処法をご説明します。
例えば、不貞行為をしたとき、自分が悪いがそれに対して配偶者が世間の相場を上回るような過剰な慰謝料請求をした場合はどうすればいいのでしょうか。
妥当な慰謝料額を知っておく
不貞行為など、明らかに自分に有責性があり悪いと思っていても、慰謝料が相場よりも高い場合は減額を申し出ることができます。
そのためには、まずは慰謝料の相場を知ることが重要です。
不貞行為、DV、悪意の遺棄など思い当たることがあっても、慰謝料はそれぞれの原因(行為)に対する相場があり、婚姻年数、子どもの数や年齢、自分の年収などの要素で増減します。まずは弁護士に相談されることをおすすめします。
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自分に有利な点を探す
全面的に自分が悪いと思っていても、実はそうではないということがあります。
例えば次のようなことに心当たりがないでしょうか。
- 不倫したときには既に夫婦関係が破たんしていた
- 不倫相手から無理やり求められた(レイプ的な行為だった)
- 不倫相手が立場を利用して関係を求めたため仕方なく応じた(セクハラやパワハラ)
- 不貞行為の回数が少ない、期間が短い
- 配偶者が確かな証拠を持っていない
これらの場合は、有責性を問われても反論する余地があります。
減額や分割払いの交渉をする
配偶者の請求額が妥当で、自分に有利な要素がない場合は請求額の支払いは避けられないと思われます。
ただ、その金額が過剰に多い場合は自分の収入や財産では支払えないことを伝え、減額または分割払いの交渉をするといいでしょう。
なお、離婚の慰謝料減額については、こちらの記事が参考になります。ぜひご覧ください。
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弁護士に依頼する
自分が不利な立場で慰謝料請求された場合は、相手の言いなりになりがちです。
特に慰謝料の減額や自分の正当性を少しでも訴えたい場合は、自分ひとりで対抗しようと思わずに弁護士に依頼してみましょう。
多少の費用はかかりますが問題がスムーズに解決しますし、減額などもできるので依頼しないよりむしろ出費は減る可能性が高いでしょう。
有責配偶者からの離婚請求まとめ
原則としては有責配偶者からの離婚請求は認められていませんが、夫婦関係の破たん(特に長期間の別居)や未成熟子がいない、離婚することで相手配偶者が過酷な状況に置かれない、といった場合は認められる可能性があります。
また、有責性があるという理由で相場以上に高額な慰謝料を請求されることもあります。
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逆に自分が悪くない場合は、有責配偶者にどう対処するのか、離婚請求されたときや慰謝料、親権の交渉などの問題が発生します。
いずれにしても自分ひとりで離婚問題に立ち向かうのはなかなか大変なことです。早めに弁護士に相談して最適な方法を取るようにしましょう。
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