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婚姻費用分担請求とは?できないケースや相場の算出方法、必要書類、弁護士費用など解説

婚姻費用分担請求とは?できないケースや相場の算出方法、必要書類、弁護士費用など解説

「婚姻費用」とは、夫婦や家族が生活する際にかかる費用(生活費)のことで、夫婦が何らかの事情で別居することになっても多く収入を得ている方が負担しなければなりません。

今回はそんな婚姻費用分担請求の詳しい内容や相手に請求する方法、必要書類や各種費用について詳しくご説明します。

婚姻費用分担請求とは?

婚姻費用分担請求_とは

夫婦には助け合う義務があり、たとえ離婚をするという場合でも離婚が成立するまでの間は収入の多い方が生活費(婚姻費用)を負担しなければいけないと民法で決められています。

【民法760条(婚姻費用の分担)】
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する

法律の言葉なので難しく書いていますが、要するには「婚姻から生ずる費用」とは「夫婦が生活するのに必要なお金」のことです。

そしてそれを「資産や収入、その他の事情を考慮して」というのは「お互いの持っている資産や収入などを考えてそれぞれが分担しましょう」ということになります。

このように本来は夫婦が収入の度合いなどに応じて負担すべき生活費(=婚姻費用)を支払わない場合は相手に請求することができます。そのことを「婚姻費用分担請求」と言います。

婚姻費用とは?

上でも書いた通り、「婚姻費用」とは生活費全般を指します。

婚姻費用に含まれるもの

婚姻費用には、次のものが含まれます。

  • 食費
  • 日用品代
  • 衣料費
  • 住居費
  • 水道光熱費
  • 医療費
  • 未成熟子(※)の養育費や教育費
  • 交際費

(※:未成熟子とは年齢にかかわらず経済的に自立していない子を指す)

このように生活するのに必要なすべてが婚姻費用の対象になります。

婚姻費用の分担方法

結婚している間は共働きの場合は互いの収入で生活費(食費、住居費、光熱費、教育費、医療費など)を分担していますが、片方が専業主婦(主夫)の場合は働いている方が生活費を負担することが多いですよね。

その際に法律では特に分担割合などは決めておらず、各夫婦(家庭)で話し合って決めています。それで特に問題はありません。

ただそれまで支払っていた生活費が支払われなくなったり、別居したりした場合にもともと負担していた金額は互いに支払う義務があり、受け取っていた方は相手に対して請求ができます。

婚姻費用と養育費の違い

離婚を考えるときには、婚姻費用とは別に「養育費」という言葉が出てきます。

婚姻費用が離婚するまでの期間の生活費であるのに対して、養育費は離婚した後に親権を持たない親が自分の子どものために支払うもので、教育費だけでなく子どもの生活費全般を含めた金額です。

なお、養育費は離婚する前と同程度の生活ができるだけの金額を支払うものとされていますが、実際には離婚するときに相手と金額や面会交流なども含めて話し合って決めます。

婚姻費用分担請求ができるケースとできないケース

婚姻費用分担請求はどんなときに請求できるのでしょうか。できないケースもあるので、違いを理解しておきましょう。

婚姻費用分担請求ができるケース

まず、婚姻費用分担請求ができるケースには、次の2つがあります。どちらもまだ離婚はしていません。

  • A:一緒に暮らしているが収入の多い方が生活費を入れない場合
  • B:別居していて、子どもを育てている場合

A:一緒に暮らしているが収入の多い方が生活費を入れない場合

民法では、夫婦は同居し、お互いに扶助しなければいけないと定めています。

【民法第752条 同居、協力及び扶助の義務】
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない

しかし、同居はしていても生活費を払わないということは、「協力や扶助の義務を果たしていない」ということになり、受け取っていない方は相手に対して請求できるということになります。

B:別居していて、子どもを育てる場合

同居している間は生活費を払っていたが、別居したら渡さなくなったというケースはよくあります。しかし、別居中でも離婚していない期間は扶養義務がありますし、子どもの養育費を負担する義務もあります。

そのため、このケースでも婚姻費用は請求できます。

婚姻費用分担請求が認められないケース

一方、婚姻費用分担請求が認められないケースもあります。

婚姻費用を請求する側が不貞行為(不倫)やDV(暴力・モラハラ)、過度なギャンブルや浪費などをして婚姻関係が破たんする原因を作ったときは、いくら請求しても認められない、または状況によっては減額されます。

他にも別居を招いた方からの請求も認められないでしょう。

婚姻費用の支払いはいつからいつまで?

婚姻費用は「請求したときから離婚が成立するまで」、または「再び同居するまで」支払われます。

つまり離婚はしていない夫婦が別居している期間中が支払い対象になります。離婚したら、その時点で支払い義務はなくなります。

また、請求するより前(過去)の分をさかのぼって請求することはできないし、請求しても認められないことの方が多いです。

なお、養育費は離婚後も支払われます。

婚姻費用分担請求の算出方法

婚姻費用分担請求できる金額は夫婦で話し合って決めることもできますが、意見が分かれる場合は算定表から算出することも可能です。

ただし、婚姻費用の金額は法律では定められていないので、この算定表を参考にそれぞれのケースで協議することが多いようです。

婚姻費用算定表の見方

「算定表」とは、東京と大阪の裁判官が共同研究で作ったもので、標準的な養育費や婚姻費用の計算が簡単にできるようになっています。

実際に多くの家庭裁判所ではこの算定表に基づいて金額の計算をしています。

婚姻費用算定表は「夫婦のみの場合」、「子どもが1人の場合」「子どもが2人の場合」「子どもが3人の場合」で、それぞれ子どもの年齢に応じて分かれています。

算定表は裁判所のサイトで見ることができます。

こちらのサイトには養育費の表と婚姻費用の表があります。養育費の表と間違えないように、婚姻費用の中から自分に合う表を探してください。

参考:https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

算定表は次の順に見ていき、交わったところが自分に該当する妥当な金額ということになります。

  1. 自分の家族構成に当てはまる表を探す
  2. 表の縦軸で義務者(婚姻費用を払う人)の自営か給与かを選ぶ
  3. 表の縦軸で義務者(婚姻費用を払う人)の年収を探す(A)
  4. 表の横軸で権利者(婚姻費用を受け取る人)の自営か給与かを選ぶ
  5. 表の横軸で権利者(婚姻費用を受け取る人)の年収を選ぶ(B)

縦軸のAと横軸のBが交わるところが婚姻費用となります。

子ども2人(第1子、第2子ともに0歳~14歳)の例でご説明します。

婚姻費用分担請求_とは1

引用元:裁判所 平成30年度 養育費・婚姻費用算定表
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

このように該当する表を開いて、縦軸で義務者(支払う人)の年収(A)、横軸で権利者(受け取る人)の年収(B)を探します。

婚姻費用分担請求_とは2

縦軸の下を見ると「給与」「自営」に分かれているので、該当する方で年収を探してみましょう。横軸も同じです。

義務者の年収が給与所得で500万円、権利者の年収が給与所得で300万円の場合、それぞれの線が交わったところの金額が受け取れる婚姻費用ということになります。
この場合、1ヶ月8万円~10万円が相場ということになりますが、この金額を参考に話し合って決めます。

婚姻費用分担請求_とは3

 

家族構成別の婚姻費用例

このように婚姻費用はお互いの年収や家族構成によって違ってきます。いくつかの例をご紹介します。

夫婦のみの場合

(権利者の年収は給与で200万円の場合)

義務者の年収(給与) 会社員 自営業
300万円 1~2万円 2~4万円
400万円 2~4万円 4~6万円
500万円 4~6万円 6~8万円
600万円 6~8万円 8~10万円
700万円 8~10万円 10~12万円

子どもが1人(0~14歳の場合)

(権利者の年収は給与で200万円の場合)

義務者の年収(給与) 会社員 自営業
300万円 2~4万円 4~6万円
400万円 4~6万円 8~10万円
500万円 8~10万円 10~12万円
600万円 10~12万円 12~14万円
700万円 10~12万円 16~18万円

子どもが2人(上の子が15歳以上、下の子が0~14歳の場合)

(権利者の年収は給与で200万円の場合)

義務者の年収(給与) 会社員 自営業
300万円 4~6万円 6~8万円
400万円 6~8万円 10~12万円
500万円 10~12万円 12~14万円
600万円 12~14万円 16~18万円
700万円 14~16万円 18~20万円

子どもが1人(15歳以上)

(権利者の年収は給与で200万円の場合)

義務者の年収(給与) 会社員 自営業
300万円 4~6万円 6~8万円
400万円 6~8万円 8~10万円
500万円 8~10万円 12~14万円
600万円 10~12万円 14~16万円
700万円 12~14万円 16~18万円

このように権利者の年収が給与で200万円の場合でも、相手の年収や子どもの数、年齢によって婚姻費用の金額は変わってきます。

婚姻費用分担請求の方法と必要書類

婚姻費用を請求する方法としては、次の3つがあります。

  • 話し合いで決める
  • 内容証明を送る
  • 婚姻費用分担請求の調停をする

それぞれの方法と注意点を見ていきましょう。

婚姻費用分担請求を話し合いで行う

夫婦で話し合って決める方法で、一番費用も手間もかからないやり方です。スムーズに決まれば円満解決できますが、デメリットは相手からの支払いが止まったときです。最初は相手が支払っていても、次第に支払いが伸びたり、止まったりすることがあるのです。

話し合いのときに「毎月〇〇万円払ってください」「了解しました」というような「口約束」だけで終わっていると、「支払って!」と言っても強制力がありません。

そんなときに備えて話し合いの段階で「合意書」を作り、さらに「公正証書」を作成しておくと安心です。

婚姻費用分担請求の公正証書とは

「公正証書(こうせいしょうしょ)」とは公証人(こうしょうにん)と呼ばれる人が作成するもので、「公文書(こうぶんしょ)」として認められています。公証人は元裁判官や元検察官など法律の専門家が選ばれます。公正証書には記載された内容を証明する「証明力」や実行する「執行力」、そして信頼性があります。

夫婦間で口約束するだけ、または紙に書いておくだけでは執行力がありませんが、公正証書にすることで公的にも認められた書類として判断されます。

さらに公正証書に「強制執行認諾条項」を入れておくと、不払いの際に給与差し押さえなどができます。

婚姻費用分担請求の内容証明を送る

相手が話し合いに応じないときや別居していて顔を合わせたくないときは内容証明郵便を送って請求する方法があります。

内容証明郵便は「誰が」「誰に」「いつ」「どんな内容の」郵便を送ったのかを証明できるものです。婚姻費用分担請求として配偶者に「〇〇万円支払ってほしい」といった手紙を送る場合、普通郵便で送ると相手は「そんなものは受け取っていない」とシラを切る可能性がありますが、内容証明郵便で送ると送付内容や送付日時が証明できます。

ただ、婚姻費用の請求方法としては可能ですが、内容証明郵便だけでは強制力がないため確実に支払ってもらえない可能性があります。

婚姻費用分担請求の調停をする

相手が話し合いに応じない場合や支払いがされない場合は、夫または妻(婚姻費用を受け取りたい方)が家庭裁判所に「婚姻費用分担請求の調停」の申立てを行う方法があります。

申立て先は相手が住む地域を管轄する家庭裁判所または2人が合意して決めた家庭裁判所になります。

詳しい方法をご説明します。

婚姻費用分担請求に必要な書類

まず、次の書類を準備しましょう。

  • 申立書(写しも1通必要)
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 申立人の収入関係資料(源泉徴収票、給与明細書、確定申告書などの写し)
必要な書類 取り寄せ先
申立書3通(※) 家庭裁判所のホームページでダウンロードする
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_25/index.html
夫婦の戸籍謄本 本籍地の役所
なお、戸籍謄本は「全部事項証明書」が必要
申立人の収入関係の資料 ・源泉徴収票(職場で発行される)
・給与明細書(職場で発行される)
・確定申告書の写し
など
収入印紙 1200円分を申立書に貼る

(※:申立書は裁判所用、自分の控え用、相手に送付用の3通を準備します。このうち、裁判所提出用にだけ1200円分の収入印紙を貼ります。)

婚姻費用分担請求申立書の書き方

婚姻費用分担請求申立書を家庭裁判所のホームページからダウンロードします。

ダウンロード先:裁判所公式サイト

https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/syosiki_01_25/index.html
または
https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_konpi_566kb.pdf

下記の記入例のように書いていきましょう。なお、記入例はわかりやすいように赤文字で書いていますが、実際は黒のボールペン(消せるタイプのものはNG)で記入してください。

① □調停 □婚姻費用分担請求にチェックを入れる
② 収入印紙1200円分を貼る(裁判所提出用だけ)
③ 提出する裁判所名を記入する
④ 記入した日(提出する日ではない)
⑤ 自分の氏名を記入する
⑥ 印鑑を押す
⑦ 添付書類( □戸籍謄本 □申立人の収入に関する資料)にチェックを入れる
⑧ 申立人(自分)の住所、氏名(フリガナ)、生年月日を記入する
⑨ 相手の住所、氏名(フリガナ)、生年月日を記入する
⑩ 対象となる子の欄に自分の子どもの氏名(フリガナ)と生年月日を記入し、同居している人の□にチェックを入れる

婚姻費用分担請求_とは_書き方4

次に2枚目(申立ての趣旨)を記入します。

① 下記の記入例のように該当する部分の□にチェックを入れる
「□相手方は□申立人に対し、婚姻期間中の生活費として、次のとおり支払うとの□調停を求めます」
1に〇をして、毎月□ 〇〇万円を支払う

〇〇万円の部分には算定表から算出した希望金額を記入する

② 同居を始めた日と別居を始めた日を記入する
(同居と別居を繰り返している場合は、一番最後に別居した日を記入する)
③ 婚姻費用の取り決めについて、話し合いをしていればその日時を、していない場合は□なしをチェックする
④ これまでの支払い状況を記入する
ない場合は□なしをチェックする

婚姻費用分担請求_とは_書き方5

相手に自分の住所を知られたくないとき

申立書は裁判所から相手に送付されます。そこには、あなたの現住所を記入するので、相手に居場所がわかってしまいます。

配偶者からDV(暴力や脅迫など)を受けていて、相手に自分の居場所を知られたくないときは、上記の申立書の自分の住所欄には何も記入せず、空欄にしておきましょう。

そして、家庭裁判所に申立書と一緒にA「非開示の希望に関する申出書」とB「連絡先等の届出書」を一緒に提出します。流れとしては、次のようになります。

婚姻費用分担請求_とは_書き方6

引用:裁判所
https://www.courts.go.jp/morioka/saiban/tetuzuki/l4/Vcms4_00000143.html
または
https://www.courts.go.jp/morioka/vc-files/morioka/file/H28_hikaizi_cyart.pdf

下記の用紙をダウンロードして、記入例のように記入してください。
(ダウンロード先
裁判所
https://www.courts.go.jp/morioka/saiban/tetuzuki/l4/Vcms4_00000143.html
または
(非開示の希望に関する申出書)
https://www.courts.go.jp/morioka/vc-files/morioka/file/H28_hikaizi_moushide.pdf

連絡先等の届出書
https://www.courts.go.jp/morioka/vc-files/morioka/file/H28_hikaizi_renrakusakitodokede.pdf

A:非開示の希望に関する申出書

① 非開示を希望する理由として該当するものの□をチェックする
② 作成日
③ 自分の氏名と印鑑

婚姻費用分担請求_とは_書き方7

B:連絡先等の届出書

裁判所からの連絡用の住所を記入します。現住所、勤務先、実家などを記入すれば大丈夫です。こちらは相手には伝わらないので、連絡がつきやすい場所を記入しましょう。
日付を記入し、下記のように書いていきます。
① □申立人にチェック
② 自分の氏名と印鑑
③ 送付場所として希望する住所
④ 平日の連絡先の電話番号
⑤ 住所と電話番号の非開示を希望するにチェックを入れる

婚姻費用分担請求_とは_書き方8

婚姻費用分担請求に必要な費用

1200円分の収入印紙(裁判所に提出用の申立書に貼付)と郵送代が必要です。

郵送代は裁判所によって異なります。1000円前後のところが多いようですが事前に確認しておきましょう。

婚姻費用分担請求に必要な弁護士費用

婚姻費用分担請求は自分でもできますが、忙しい人や子どもが小さくて自分で行動するのが難しい人、相手の暴力などが不安な人などは弁護士に依頼するとスムーズに進められます。

また、婚姻費用の計算もしてもらえるので安心です。

弁護士の費用ですが、婚姻費用分担請求だけを依頼するケースは少なく、離婚や慰謝料請求、離婚に伴う親権、養育費なども依頼することになります。

その際の費用には次のものが含まれます。

  • 相談料……無料~30分5000円など
  • 着手料……10万円~20万円
  • 報酬……20万円~30万円(依頼する内容によって異なる)
  • 日当や交通費などの実費

婚姻費用を請求するということは、すでに別居している、または同居でも相手から生活費がもらえない状況ということになります。

そうなると、たとえ生活費をもらえるようになったとしても夫婦としての関係修復は難しいのではないでしょうか。

離婚も含めた相談になりますし、状況によっては相手に慰謝料請求することも考えられます。個別に相談・依頼するよりも、トータルで依頼するのが得策だと言えます。

婚姻費用分担請求の調停が不成立だった場合

家庭裁判所での調停は2人の調停委員が間に入ってお互いの言い分を聞いてくれます。ただ、調停をしたからと言って、相手が素直にあなたの要求を認めるとは限りません。

婚姻費用分担請求の調停で話がまとまらず不成立に終わったら、その時点で自動的に「審判」が行われます。

裁判官が審理を行い、双方の事情を考慮した上で審判を下します。

婚姻費用分担請求をしても相手が払わない場合

調停や審判をしても、相手が支払わない場合はどうすればいいのでしょうか。

婚姻費用分担請求の調停や審判は執行力がある

調停が成立すれば「成立調書」が、審判になった場合は「審判書」が作られます。この書類には「執行力」があり、相手が婚姻費用を支払わない場合は裁判所に「強制執行」を申立てることで、給与や財産の差し押さえができるようになります。

強制執行以外に、次のような方法もあります。

履行勧告

裁判所から相手に支払うように促してもらう方法で、次に述べる間接強制のような費用がかからないのがメリットです。

間接強制

一方、間接強制は「〇月〇日までに支払うように」という期限を決めて、それまでに支払いがない場合は「間接強制金」という罰金のようなものを科すことができる方法です。

申立人は2000円の費用が必要です。ただ、どちらの方法を取っても支払わないときは、最終的には「強制執行」をすることになるので、現実的には最初から強制執行を申立てる方がいいでしょう。

夫婦だけの話し合いの場合は要注意

上で書いたように強制力があるのは「調停」または「審判」になった場合です。

調停を行わず夫婦で婚姻費用の支払いについて話し合ったときは強制力がないため、相手が支払わないというケースが起こりやすいです。

その場合は公正証書を作成しておくと強制力があるのでおすすめです。

婚姻費用分担請求は離婚請求と同時進行がベスト

婚姻費用分担請求は離婚するまでの別居期間の生活費を請求するものですが、離婚を前提に別居している場合は早く離婚を成立させた方が公的支援を受けられるのでお得になります。

もし別居生活が夫婦でやり直すための冷却期間として行っているのならそれでもいいですが、いずれ離婚するのなら婚姻費用分担請求と離婚請求を同時に進める方が裁判所に申し立てる手間を考えてもおすすめです。

迷ったときは弁護士に相談を

離婚を視野に考えているときはどの方法を取るのがいいのか、進め方なども含めて弁護士に相談してみましょう。

弁護士に相談して婚姻費用を獲得できた例

あるケースをご紹介します。家族構成は次の通りで、自営業の夫はある日、家族を残して家を出てしまいました。どうやら数ヶ月前から不倫をしていたようで相手の女性(ひとり暮らし)の家に行ってしまったようです。

最初の1ヶ月は妻の預金口座に生活費が振り込まれましたが、その後は支払われず電気代や水道代などの光熱費も夫の口座から引かれていないようで家に督促状が届くようになりました。

中学生と高校生の子どもを持つ妻は、パート収入だけではどうにもできず弁護士に相談に行きました。

相談者 妻(40代後半 パート勤務/年収200万円)
相手 夫(50代前半 自営業/500年収)
婚姻期間 約17年
子ども 高校生(16歳)と中学生(13歳)
別居期間 約3ヶ月

婚姻費用の算定表から自営業である夫の年収(500万円)とパートの妻の年収(200万円)、15歳以上の子どもと14歳までの子どもが1人ずついることから婚姻費用は16~18万円が妥当と判断されました。

弁護士が夫に打診したところ、妻の元に戻る気持ちはないということがわかりました。

そこで、別居期間中の婚姻費用の請求、離婚後の子どもの養育費、夫と相手女性への不貞行為に対しての慰謝料請求と離婚の成立に向けて話し合いを進めていきました。

協議では結論が出なかったため調停を申立てて、夫は自宅を妻に渡す(財産分与する)ことを提示することで慰謝料は大幅に減額、婚姻費用と養育費は妻の要求を認めるということで離婚が成立しました。

妻は「弁護士に相談しないまま自分で何とかしようと行動しても、相手はのらりくらりとした態度で全然話が進みませんでした。相談してよかったです」と話しています。

婚姻費用や離婚後の生活費用などでお困りの方は、一度弁護士に相談してみましょう。

婚姻費用分担請求を受けたときの対応

次に婚姻費用の分担請求を受けたときの対応についてご説明します。次のような流れで考えてみましょう。

  1. 請求額が妥当かどうか判断する
  2. 相手にも落ち度がないのか調べる
  3. 自分で払える金額に減額交渉する

請求額が妥当かどうかを判断する

いきなり配偶者から婚姻費用を請求されても、それが妥当な金額なのかどうか一般の人には判断ができないと思います。

婚姻費用に計算の法的なルールはありません。そのため、目安になるようにと、東京と大阪の裁判所がさまざまな統計資料をもとに一定の算定表を作り、公開しています。
実際に多くの調停や裁判の場面でも、この算定表を元に計算されています。

算定表は裁判所のホームページで見ることができます。
https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/siryo/H30shihou_houkoku/index.html

自分で見てみて、請求額が妥当かどうかを調べてみましょう。

相手にも落ち度がないのか調べる

婚姻費用は「別居状態になったら必ず支払うべきもの」ではありません。

例えば、妻が不倫をして家を出ていき別居状態になったという場合のように、相手に非があり、別居したケースでは婚姻費用の請求はできません。

また、夫婦けんかの結果、相手が勝手に家を飛び出して別居生活になった場合も、婚姻費用請求は認められないことがあります。

ただその場合、相手が「夫の暴力がひどかった」などあなたの非を訴える場合があります。心あたりがないかどうか、相手が言っている内容に証拠があるのかどうかをよく検討してみましょう。

自分で払える金額に減額交渉する

請求額が妥当で、相手には何の落ち度もないという場合は支払わざるを得ません。

しかし、算定表よりも高額な金額を請求されたときは、調停で減額を交渉してみましょう。また、借金がある、失業したなど支払えない理由がある場合も、それを伝えて減額交渉する方法があります。

調停では直接相手と交渉するのではなく、間に調停委員が入って話を聞いてくれるので、ご自身の状況をありのままに伝えてみるといいでしょう。

婚姻費用分担請求されたときの注意点

婚姻費用分担請求されたときの注意点を2つ、お伝えしておきます。

注意1:決定した婚姻費用の減額は困難!

一度決定した後で婚姻費用減額調停を申立てても認められないことが多いので、支払いが困難という場合は調停が成立するまでに伝えて減額してもらいましょう。

注意2:払えないで放置すると法的措置が取られる

決定した金額を払わないと給与や預金口座の差し押さえなどの可能性があります。
なお、婚姻費用の支払いは別居期間中なので、早くに離婚を成立させればそれ以降の支払いはなくなります。離婚の話を早めに進めるというのもひとつの方法です。

婚姻費用分担請求についてまとめ

婚姻費用は結婚生活中にお互いに支払うべき生活費のことですが、相手(特に収入が多い方)が支払わない場合に請求することを「婚姻費用分担請求」と呼びます。

婚姻費用は離婚が成立するまでの期間が対象で、別居中に生活費に困ったときなどに請求します。

調停の申立てをするのが効果的ですが、近いうちに離婚を考えている場合は婚姻費用分担請求だけでなく、離婚の成立、慰謝料や養育費などを含めて弁護士に相談するといいでしょう。

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