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離婚の慰謝料が払えない場合どんなリスクがある?減額交渉は可能?

離婚の慰謝料が払えない場合どんなリスクがある?減額交渉は可能?

離婚の原因はさまざまですが、夫婦のどちらか一方に責任がある場合、離婚の原因を作った方(有責配偶者)は相手(無責配偶者)から慰謝料を請求される場合があります。

しかも、慰謝料は100万円以上と高額です。「そんな額、とても払えない!」というとき、支払いを放置していたらどのようなリスクがあるのでしょうか?

また、支払い額を減額してもらうことは可能なのでしょうか。このページでは離婚の慰謝料が払えない場合のリスクと対処法について詳しくご説明します。

決して安くない離婚の慰謝料!払えないときに起きる3つのリスクとは?

離婚_慰謝料_払えない_リスク

まず最初に離婚をすることになったものの慰謝料が払えない場合のリスクを知っておきましょう。

  • 給与や預貯金を差し押さえられるリスク
  • 遅延損害金を請求されるリスク
  • 慰謝料請求訴訟を申し立てられるリスク

これらをひとつずつ詳しく見ていきます。

給与や預貯金を差し押さえられるリスク

慰謝料決定の段階で公正証書や和解・調停調書などを作成する場合があります。

これらの書類には法的な効力があり、「支払わないときは給与や預貯金を差し押さえる」と記載されていると本当に差し押さえられます。

このことを「強制執行」と呼びます。さらに給与や預貯金を指し押さえられることで、次のようなリスクがあります。

会社の人にバレる

給与が差し押さえられると、当然会社の人にバレてしまいます。

もちろん担当者は個人情報をむやみに口外することはありませんが、少なくとも上司、経理や人事の担当者の耳には入ってしまうでしょう。

生活に困る

給与は支給額の全額を差し押さえられるというわけではありません。一般的に税金や社会保険料などを差し引いた残りの金額の2分の1までとされています。

それでも給与を差し押さえられると手取り額は大幅にダウンするので、あなたの生活が困窮します。預貯金を差し押さえられる場合も同様で、その後の生活が苦しくなってしまいます。

遅延損害金を請求されるリスク

慰謝料の支払いが遅れると、借金と同じように遅延損害金(利息)を請求される可能性があります。

借金には上限金利が設定されていますが、慰謝料や養育費も次のように上限金利が設定されています。そのため上限金利以上の利息はつきませんが、遅れると利息を請求されることがあるので注意が必要です。

元金(請求金額) 上限金利
10万円未満 年29.2%
10万円以上100万円未満 年26.28%
100万円以上 年21.9%

これは支払いが遅れた場合に請求される利息なので、きちんと支払っていれば請求されることはありません。

それにしてもかなり高い利率なので、遅れると遅延損害金だけでも高額になる恐れがあります。

約定がなくても5%の利息が発生する

遅延損害金に関する取り決め(約定)をしていなくても、民法第419条に次のように定められています。

民法 第419条
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率(※)によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。

(※法定利率とは民法 第404条で年5%と定められている)

つまり、慰謝料に関する契約をした際に損害賠償に関する取り決め(約定)がない場合でも、法定利率である5%までは請求ができるということです。

慰謝料請求訴訟を申し立てられるリスク

慰謝料の請求に関して公正証書を作成していると、給与差し押さえなどの強制執行が行われます。

一方、公正証書を作っていない場合で支払いが遅れたら、相手側はあなたに対して「慰謝料請求訴訟」を起こす可能性があります。

裁判になると出廷しなければいけません。その上で支払い命令が出されますが、それでも支払わないでいると相手側は給与や預貯金の差し押さえという手段を取ることが可能になります。

訴訟を起こされたら必ず出廷し、支払いを分割にしてもらうとか、少しでも減額してもらうなどの方法を考えましょう。

離婚の慰謝料が払えないときは減額が効果的

離婚_慰謝料_払えない_減額交渉

自分に非があり慰謝料を請求されたが、どうしても慰謝料が払えないときは「減額」という方法が存在し、非常に効果的です。

また、減額には「減額交渉」と「裁判」の2つの方法があります。

慰謝料の減額交渉とは?

慰謝料の減額交渉とは、文字通り相手と交渉して減額してもらう方法です。

一般的には慰謝料請求に対する「回答書」に減額してほしい旨を記載します。回答書は反論書と呼ばれることもあります。

慰謝料請求の回答書の書き方

慰謝料請求書に記載されている内容が事実かどうかを確かめた上で、離婚に至った謝罪や反省を書き、慰謝料は支払いたいが次のような理由で減額してほしい(具体的に〇〇万円を支払う)と書きます。

その際には、減額できる理由を具体的に述べることが重要です。いくつかの例をご紹介します。

  • 浮気をしたのは事実だが、肉体関係は1回だけだった
  • 浮気相手が執拗に迫ってきて仕方なく行為に及んだ
  • 給与が減って、とてもその金額は払えない
  • 請求額は相場よりかなり高い

このような理由をあげて減額を交渉してみましょう。

なお、「給与が減って請求額が払えない」といっても全額免除されるわけではありませんし、浮気の回数や相手から誘ったかどうかなどは証明できないと意味がありません。

ですが、本当に自分の非は少ないという場合や支払いが厳しいという場合はそれを理由に回答書を書いて送ります。

また、回答書の最後に「示談書を取り交わしておきたい」と記入すると、今後のトラブルに対して安心です。

自分ひとりで文書を作成するのが不安な場合は、弁護士にお願いするとスムーズに進められます。

裁判で慰謝料を減額する方法

裁判で慰謝料を請求された場合、相手からの訴状に対して減額したい旨とその根拠となる理由(上記にあるような内容)を「答弁書」に記載し、提出します。

ただ、裁判は一般の人は経験することがほとんどなく、書類作成や進め方に不安を感じることがあります。

この場合も離婚や慰謝料に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。

慰謝料減額交渉の前に確認すべき4つのポイント

なお、減額交渉の前に、次の点をよく確認しましょう。

  • 慰謝料を払う義務があるのかどうか
  • 請求されている慰謝料が妥当な額かどうか
  • 時効が来ていないかどうか
  • いくらなら払えるのか

慰謝料を払う義務があるのかどうか

そもそもあなたと配偶者の離婚では、あなたに慰謝料を払う義務があるのかどうかを確認することが大切です。

慰謝料の支払い義務があるケース ・不貞行為(不倫・浮気)
・DV(暴力・モラハラ)
・悪意の遺棄(※1)
・セックスレス(性的不能)
・婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
慰謝料の支払い義務がないケース ・性格の不一致
・単なる夫婦ケンカ
・離婚の原因が夫婦双方にあり、責任の重さが同程度の場合
・不貞行為が起こる前に夫婦関係が破たんしていた場合(※2)

※1:悪意の遺棄とは、どちらか一方が正当な理由なく同居を拒否したり、生活費を入れなかったりすることを指し、離婚事由として認められています。

※2:自分の不貞行為(不倫や浮気)で離婚することになり、配偶者から慰謝料請求された場合でも、夫婦関係がそれ以前からすでに破たんしていたら慰謝料請求の対象にはなりません。

証拠がない場合はどうなる?

不貞行為やDVなどで離婚するときは慰謝料を請求される可能性があります。

しかし、それらの行為の証拠がない場合は、慰謝料を請求されても「そんなことはやっていない!」と拒否することができます。

いわゆる「しらを切る」ということですが、実際に不貞行為やDVをしていた場合はいずれ何らかの形で証明される可能性があり、そのときは不利になるので注意してください。

請求されている慰謝料が妥当な額かどうか

慰謝料の支払い義務が発生する場合でも、請求額が妥当かどうかを確認しましょう。そのためには離婚原因別の慰謝料の相場を知っておくことが大切です。

慰謝料の金額は、次のように離婚の原因によって異なります。

離婚の原因 慰謝料の相場
不貞行為(浮気・不倫) 100万円~300万円
DV(暴力など) 50万円~300万円
モラハラ 100万円~300万円
セックスレス 50万円~150万円
悪意の遺棄 50万円~150万円

さらに夫婦の状況(どちらがより責任が重いか、婚姻期間、夫婦の年齢、精神的・肉体的な苦痛の状況、子どもの有無)などでも金額は変わってきます。

まずは請求されている額が上記の相場と大きくかけ離れていないかどうかを確認してみましょう。

時効が来ていないかどうか

離婚の慰謝料請求には時効があり、離婚した日から3年以内に請求しないと請求する権利がなくなります。

もし今、相手から離婚の慰謝料を請求されている場合、時効が来ていないかどうかを確認してみましょう。

離婚慰謝料の減額交渉を自分でする場合のコツ

離婚_慰謝料_減額交渉

慰謝料の交渉は、次のようにかなり高度な技術が求められます。

まず相手があなたの足元を見ていることを把握する

相手はあなたの状況を把握し、足元を見ています。

例えば、「これだけの年収があるので、〇〇万円までなら払えるはずだ」「実家が資産家なので支払いに困ることはない」など、あなたの状況を把握した上で慰謝料を設定している可能性があるのです。

そのような状況にある人が、経済的な理由で減額を申し出ても効果は見込めません。

また、浮気が複数の相手と何度もあった場合、「浮気はこの人とだけじゃなく他にも何人もいたんだから、これくらいの慰謝料を請求されるのは当然」と強気に出られることがあります。

反論の余地がない場合は、減額ができない可能性があります。

分割払いを嫌がる心理を利用して減額を提案する

慰謝料を請求する相手に対して「どうしても一括では払えないので分割にしてほしい。ただし、〇〇万円に減額してくれたら一括で支払う」と交渉すると、その希望が通る場合があります。

相手は分割の途中で支払いが遅れたり途絶えたりするのを嫌がるためで、慰謝料の金額は減っても一括で支払ってもらう方がいいという心理を利用して交渉する方法があります。

相手の非を突いて減額交渉する

「離婚に至った原因の多くは自分が悪いが、配偶者にも〇〇の非がある」と責めることで減額できる場合があります。

例えば、「浮気は出張先での1回だけでその後、継続しているわけではない。また、妻が性交渉に応じないことが浮気の引き金になった」などです。

こういった要素をうまく絡めて減額を成功させるには、状況や相手の心理などを読む必要があります。

離婚の慰謝料が払えないときのリスクと対策まとめ

離婚の慰謝料請求が払えず放置していると、給与や預貯金の差し押さえ、遅延損害金(利息)の上乗せ、慰謝料請求訴訟を起こされるなどのリスクがあります。

特に公正証書などが作成されていると給与差し押さえなど強制執行する効力があるため、注意が必要です。

どうしても払えない場合や請求されている慰謝料の金額に納得できない場合は、減額交渉をすると良いでしょう。

ただ慰謝料の減額は高度な技術と法律的な知識が求められますので、自分ひとりで解決しようとせず専門の弁護士に相談するようにしましょう。

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