無職の夫(妻)と離婚!養育費や慰謝料の相場、親権などを解説
離婚が決まると、子どもがいる場合は親権や養育費の問題が発生します。また、離婚原因によっては慰謝料を請求することもあります。
しかし相手が無職で収入がない場合は養育費や慰謝料、親権などを獲得することはできるのか気になる方は多いと思います。そこで今回はその答えとともに、その際の相場についてもご説明します。
無職の夫(妻)との離婚で養育費は獲得できる?
無職でも養育費の支払い義務はある!
たとえ両親が離婚しても、子どもにとってはどちらも自分の親であることに変わりはありません。そのため、無職でも子どもを扶養する義務があります。
養育費は「余裕があれば支払う」という意味のものではなく、自分の生活費を削ってでも支払うべきものとされているからです。
そのため、当然親権を持つ方は子どもが成長するまで養育をしますし、親権を持たない方も「義務者」として養育費を負担しなければなりません。
無職の場合、養育費は誰が負担するべき?
養育費は親権を持たない方(義務者)が親権を持つ方(権利者)に支払います。そのため、養育費は無職、有職に関わらず親権を持つ方が負担するべきです。
なお、養育費の金額は子どもの数や年齢、義務者と権利者の年収によって算出されます。
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養育費の請求時効は5年?10年?
離婚して親権を持つ方(権利者)は相手に養育費の請求ができますが、下記のようにケースごとに時効があるので注意が必要です。
- お互いの協議で養育費の金額や支払い期間などを取り決めた場合…5年
- 裁判で養育費の支払いが決まった場合…10年
協議で養育費を決めた場合
双方の話し合いで養育費の金額や支払い期間、支払い方法などを決めた場合、養育費の支払いは「定期給付債権」となります。
よって民法第169条によって時効は5年と定められています。
民法 第169条(定期給付債権の短期消滅時効)
年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。
相手が養育費の支払いを止めた場合、5年経過するとそれまでの分は請求できなくなります。
裁判で養育費の支払いが決まった場合
裁判で養育費について決定した場合は、民法第174条の2によって時効は10年となります。
民法 第174条の2(判決で確定した権利の消滅時効)
確定判決によって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。
前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。
時効を中断することも可能
ただ、これらの時効は次のようにいくつかの方法で中断することができます。
方法 | 内容 |
---|---|
支払督促 | 裁判所を通じて養育費支払いの督促状を送付してもらう |
調停 | 裁判所を通して協議を行い、そこで合意すれば時効は中断する |
訴訟 | 裁判所に養育費支払いについて訴訟を起こす方法 |
差押さえ 仮差押さえ 仮処分 |
訴訟手続きを行っている途中で相手が財産を処分しないために裁判所の法的な手段で財産の差し押さえなどをする方法 |
債務承認 | 相手が養育費の支払いの念書を書く、養育費の一部を支払う、返済延長を申し出る…などは相手が債務(養育費の支払いがあること)を認めることになり、時効が中断する |
こういった方法は法律の専門的な知識が必要となるため、離婚や養育費の問題にくわしい弁護士に相談しながら進めるといいでしょう。
養育費の取り決めがない場合は時効はない
上記のように時効があるのは協議または裁判で養育費の取り決めをした場合です。
離婚時に養育費支払いに関する取り決めをしなかった場合は特に時効はなく、子どもが自立するまでならいつでも請求が可能です。
ただ、何も取り決めをせずに相手の自主性に任せていると、途中で支払いが途絶える危険性があります。そのため、離婚するときに養育費についてもしっかり話し合って決めておくといいでしょう。
養育費は子どもから請求することも可能
なお、離婚時に夫婦間で養育費の取り決めをしなかった場合や養育費は請求しない(もらわない)と決めた場合でも、子どもから請求することは可能です。
これは子どもにも養育費を請求する権利があるからです。とは言っても幼少の子どもが自分で請求することは困難です。子どもが請求する場合は親が代理で調停手続きをする方法を取ります。
また、この場合、「進学や留学でお金が必要」「病気の治療費が必要」「親権を持つ親が働けなくなって収入が減った」などの正当な理由が必要です。
無職の夫(妻)から実際に養育費を請求できた判例
では、実際に無職の夫(妻)に養育費を請求して獲得できた事例を見てみましょう。
借金があっても養育費の支払いを命じた判例
別れた夫には借金があり、現在も返済中です。この状況では養育費はもらえないと思っていましたが、弁護士に相談したところ相手は借金の返済を継続しており返済能力があるため、養育費も支払うべきだと言われました。
弁護士の力を借りて裁判をしたところ、養育費の支払いが命じられました。
40代 女性
失業保険を受給中でも養育費の支払いを命じた判例
離婚時、夫は失業しており、失業保険を受給しています。子どものために養育費がほしいと思っていましたが、「失業中ではどうにもならないのでは?」とあきらめかけていました。
しかし、弁護士に聞いてみると「失業保険は失業した本人の生活費だけでなく家族の生活を支えるという意味合いがある」とのことでした。
過去にも、相手が失業保険を受給している時期でも養育費の支払いはすべきという判例があったと聞き、自分も訴訟を起こして請求。少しずつですが、受け取れるようになりました。
50代 女性
現在は無職でも養育費は支払いが命じられた判例
離婚した夫はいくつかの資格を持っていて、会社でも実績を積んでいました。しかし、上司との折り合いが悪くなり退職してしまいました。
そのため、「収入がないので養育費は支払えない」と言ってきたのです。そこで弁護士に相談をしたところ、「健康状態は問題がないし、保有資格や過去の職歴などを考えても、今後十分に働けるので養育費を請求することは可能」と言われました。
そこで元夫と転職が決まったら養育費を支払うという内容で公正証書を書き、今でもきちんと支払ってもらっています。
30代 女性
潜在的稼働能力があれば養育費の請求は可能
この例のように、離婚時または離婚後に無職となっても、過去の職歴や健康状態、保有している資格などから今後十分に働けると判断された場合、養育費の支払い請求は可能です。
これを「潜在的稼働能力」と言います。現在は無職でも働けるようになってから支払ってもらうことができますが、その際には口約束にならないように公正証書や調停調書を発行しておくと安心です。
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夫(または妻)が無職の場合に親権は誰が持つべき?
離婚時には、夫と妻のどちらが親権を持つのかでもめるケースが多くあります。
親権者になる条件は必ずしも収入の有無だけではなく、総合的に見て子どもの育成に適していることが重要です。
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一般的には親権者に求められる条件を満たしている方
親権者に求められる条件には、次のようなものがあります。
- 子どもへの愛情がある
- 一定の収入(経済力)……収入や住むところがない場合でも実家で同居するなどの条件があれば親権を持つことは可能
- 住宅事情や学校への通学の影響が少ない
- 兄弟が離ればなれにならないかどうか
- 子どもの意思
相手が無職で親権を渡したくない場合は自分が親権者になるべき
しかし相手が無職で親権を渡したくない場合は、上記の条件にあるように「収入面で不安があること」や「子どもが自分との同居を望んでいる」など自分の方が親権者に向いていることを主張しましょう。
なお、親権をどちらが持つかを決めるにはまず双方で話し合いをします。そして上記の主張をしても話し合いがまとまらない場合は調停、それでも決まらない場合は裁判という順に進めていきます。
無職の夫(妻)との離婚で慰謝料請求は可能?
無職の夫(または妻)と離婚する際に慰謝料請求は可能なのでしょうか?
一般的に離婚で慰謝料請求ができるケース
まず、離婚で慰謝料請求ができるケースを整理しておきましょう。次のケースで慰謝料請求ができます。
- 不貞行為
- 悪意の遺棄(生活費を渡さない、理由のない長期別居など)
- DV(暴力やモラハラ)
- セックスレス(性的不能)
- 婚姻を継続し難い重大な事由がある場合
無職の相手から慰謝料を取るのは難しい!
しかし上記の慰謝料請求の理由に該当しても、相手が無職で収入がない場合は実際に慰謝料の支払いを受けるのは難しいです。
そのため、相手が無職の場合は慰謝料の相場は厳密には存在しないと言えるでしょう。
ただ、その場合に行える対策として、次の2点があります。
- 相手の財産を差し押さえる
- 浮気相手に請求する(不貞行為の場合)
相手の財産を差し押さえる
相手が無職で手持ちの現金が少ない、今後の収入のメドが立たないという場合でも、「強制執行」をして相手の財産を差し押さえる方法があります。
この場合の財産は、次のようなものを指します。
- 土地や住宅などの不動産
- 預貯金
- 株式などの有価証券
- 自動車
- 宝石などの貴金属
- ブランド品
- 給与
慰謝料の催促をしても支払われない場合は、このように強制執行という方法で財産を抑えることができます。
そのためには、慰謝料の話し合いの際に「もし支払わない場合は財産を差し押さえる」という主旨を記した「強制執行認諾約款付公正証書」を発行しておきましょう。
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不貞行為の慰謝料は浮気相手に請求する
不貞行為は必ず相手がいます。配偶者の不貞行為が原因で離婚する場合は、自分の夫(妻)だけでなく浮気相手に請求することが可能です。
ただし、自分の夫(妻)が強引に誘って相手が断れなかった場合や、浮気相手の氏名住所が不明の場合などは請求が難しくなります。
浮気調査専門の探偵に依頼するなどして相手を特定をし、その上でしっかりとした証拠をつかんでおくことなどの対策を取っておきましょう。
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浮気調査を探偵へ依頼する場合は、以下の探偵広場というサイトを利用してみることをオススメします。
自分の住んでる地域から、浮気調査に最適な探偵を探すことができます。また、弁護士と同様に初回相談は無料である事務所も多いです。
公式サイト:https://tanteihiroba.com/
無職の夫(妻)と離婚をする際の養育費や慰謝料、親権のまとめ
無職の夫(または妻)と離婚する場合、相手に収入がないからと養育費や慰謝料の請求をあきらめてしまいがちですが、養育費は相手が失業中であっても生活を切り詰めて支払うべきものなので、あきらめずに請求しましょう。
実際に相手が無職でも養育費の支払いを命じた判例がいくつもあります。
ただ、慰謝料に関しては相手が無職の場合は支払ってもらうのは難しいと言えるでしょう。その場合、財産の差し押さえ(強制執行)という方法があるので、無職の夫や妻との離婚を検討している方は一度弁護士に相談してみましょう。
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